5億円を資金調達した26歳ITベンチャー社長が大切にする「想いの伝え方」
起業から1年、偉い人との出会うときのコツは?
――そんな状況を打開するきっかけのようなものはあったのですか?
清水:起業して1年ほどたったころ、大原茂さん(株式会社ウィルグループ代表)にお会いする機会があり、出資していただけることになりました。
きっかけは何かの商材の営業へ行ったことだったと思います。当時、担当してくれた方が「君、気合入ってるから、社長に会わせてみるか」と引き合わせてくれたんです。ただ、「社長に会っても、営業はしちゃダメよ」と釘も差されました(笑)。
――それだけ熱量があったということでしょうか。そこで何を話したわけですか?
清水:「日本をぶち上げる」という話をぶつけました。「大学にピンとこなくて起業したんです。日本をぶち上げたいという想い、ビジョンはあるんです!」といった話をしたように思います。
でも、大原さんの反応は「日本をぶち上げたいのはわかったけど、どうやってやるのか見えない」と。
確かに自分としても戦略が固まっていませんでした。たとえば、“世界平和”を実現したいとしたら、「じゃあ、世界平和ってどんな状態?」「どうなったら実現する?」「まず何から手を付ける?」といった解決へのストーリーや各ステップが必要になるでしょうけど、まったく持っていない状態だったわけです。
大原さんからは「気合いはわかったよ。でも、君の言っている『日本をぶち上げる』というのは、今、君のやってるビジネスとリンクしてるのか? そうでもないんじゃないか?」と。それから「ぶち上げるとはどういうことなのか、どうやって実現するのか、考えてみろよ」と課題をもらいつつ、出資していただいたという経緯があります。
――出資金のおかげで長期スパンで計画を立てられるようになったのでしょうか?
清水:そこまで大きな額ではなく、「応援しているよ」という意味の少額出資だったので、そういうことよりも「ちゃんと考えなきゃダメだ」と立ち止まって考えるきっかけをいただいたことで、大きな転機になったと思います。
――チャンスをつかむために格上の人物と対峙するというのは、起業家にしても、会社員にしてもありそうです。そんなとき清水さんは何を心がけていたのですか?
清水:良い意味で空気を読まないというか、臆さないようにしたうえで、素の自分の思いを伝えるようにしていました。
相手がスゴい人だとビビっちゃうじゃないですか。それは誰しもあると思うんです。だからといって、むやみに謙遜したり媚びへつらうことはしない。これはデカい態度をとるという意味ではなく、「そーなんですねー」と相槌役ばっかりやらないということです。
偉い人なんて一瞬しか会えませんから、「ハハーッ!」と萎縮していたら機会も時間ももったいないですよね。
――素の自分を見せるのは胆力も必要ですね
清水:確かに「こいつ、大したことねーなー」と思われるのはつらいものです。でも、それを怖がらない。
たとえば「すげーアイデアがあるんですよ!」と迫っても、相手にとっては大したアイデアではないかもしれない。仮に堀江貴文さんとビジネスの話をできる機会があったとしても、多くの人が怖くてビジネスのアイデアなんて言い出せませんよね。
それでも、自分が考えていることは、口に出さなければ伝わりません。レスポンスとしてきっついダメ出しが返ってきても、それを糧にして自分を改善していけるじゃないですか。
僕の場合、相手の話を理解できないときには「ごめんなさい、今、すごく大事なことを言ってもらえている気がするんですけど、わからないです」などと、自分の程度を伝えていましたね。
根幹事業として会話ロボットの開発に乗り出す
――なぜ、「会話ロボット」に目をつけたのでしょうか?
清水:人口減少が進んで産業も衰退していく日本で、シンプルに人の代わりに働いてくれるロボットに目を向けたんです。その中で先鞭をつけるとすれば“コミュニケーション”だろうと。
――「会話ロボット」の開発にあたって、手始めにどんなことをされたのですか?
清水:会話ロボットを作ろうとすると、そもそもロボットが必要ですし、開発環境も必要、そのうえで会話をさせるためのシステムを組まないといけません。まずは開発環境を整えるために、先発している会話型ロボットを入手することになりました。
ところが、当時はSoftBankさんのペッパーを買うお金はなかったんです。そこで少しお安いDMMさんのパルミーを選びました(※ペッパーの一般販売モデルは3年間で約120万円のコストがかかる。パルミーは30万円ほど)。ところが、なんと買った後で開発環境が提供されていないことが発覚したんです(苦笑)。「なけなしの30万円を大変なことに使ってしまったぞ……」と。
一方で、Twitterでは「新入社員としてパルミー君を迎えました」といった発信をしていました。すると、なんと、開発元のDMMの方が見つけて連絡をくださったんです。「開発環境をリリースする予定があるから、やるなら先に渡すよ」と。これはありがたかったですね。
――SNSが縁を繋いでくれたのですね。SNSの使い方で意識していることはありますか?
清水:僕もTwitterなどは億劫なのですが、それでも発信するようにしていますね。「飲みに行きてー」とかはまったくつぶやかないですけど(笑)。
とにかく、こっ恥ずかしくても、自分の思いを発信したほうがいいんじゃないでしょうか。「こういう社会になってほしい」とか、「そのためにこうしてる」とか。身の丈にあってないようなことでもいいんです。
他人から「日本をぶち上げたい」と言われたら、さすがに「あっそ」では終わらない。「それってどういうこと?」となりますよね。ぶち上げるの定義について語られれば、「それがぶち上げってことなの?」「それ以外にもこういうのあるんじゃないかな」などとツッコまれますし。
何かしらレスポンスが返ってくるので、カッコつけてごちゃごちゃ言わなくても、一言、自分のテーマがあればいんじゃないかなと思います。人って良い意味でけっこうおせっかいなんですよ。