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喫茶室ルノアールの“長居していい感”の秘密。「愛する会」会長が語る

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ルノアール愛がありすぎて書籍を出版

ルノアール本

『喫茶室ルノアール”本”店Vol.1』(ルノアールを愛する会)

――「ルノアールを愛する会」の発足、そして書籍『喫茶室ルノアール“本”店vol.1』出版の経緯を教えてください。

山内:深夜に仕事をしようと靖国通り沿いのルノアールに行くと、飲み友達数人がどこからともなく集まってきて、別々のテーブルでなにやら作業をし始める。

 それぞれ違う職業なんだけど、なぜか何時間かに1回同じテーブルに集まってくるんです。そうしたなかで「これはなんかあるよな」という話になりました。仲間同士でルノアールについて話しているうちに、「Vol.1」に寄稿していただいた作家のせきしろさんのように、私たち以外にもルノアールを愛している人がいることがわかったんです。

 それで「せっかくだから話を聞いてみたいよね、じゃあまとめて本にしちゃおう」と。

――会ができてから本を作ったわけではないんですね。

山内:簡単に言うと、みんなのルノアールへ愛が強く、その愛をアウトプットして形にしようという思いが先にあった。それで本を出すために名義が必要だということで、そのまんまなのですが「ルノアールを愛する会」という名前に決めました。そして私は編集長のような役割をしていたので、会長を名乗ることになりました。

――本では当時のルノアール社長へのインタビューも収録されていますよね。

山内:最初は身近なところで話を進めていたんです。ルノアール好きの人たちに「今度ルノアールに関する本を書くんで寄稿してください。ギャラはありません」と。でもそのうち盛り上がってきて、「どうせなら“本丸”を攻めようぜ!」という話になって、本社に連絡を取ってみたんです。

 そうしたら私たちみたいな訳の分からない人のために、秘蔵の資料を見せてくれたり、いろいろな話をしてくださって。「カップのデザインが年代によって違うのでは?」など気付いたことを本社に取材したりしながら、あれよあれよという間に本が出来上がりました。

 反響があったので「Vol.2」の話も出ましたが、諸般の事情で出版することができていません。みんな仕事の合間に手弁当でやっているので……。クラウドファンディングも考えてみようかなと思っているところです。

「他の店に通う理由がない」ルノアールの魅力

ルノアール

山内さんがよく注文する水出しアイスコーヒーは「8時間以上かけてゆっくりと抽出されている」

――他のコーヒーチェーンにはない、ルノアールにしかない魅力とはなんでしょうか?

山内:ルノアールは空間と従業員さんのクオリティが非常に高い。創業当初からルノアールは「我が社は空間提供業」と言い続けていて、それがブレていないんです。

 席も1坪に1.5席という割合で作られていて、座り心地も最高。席が密集していないので適度にプライバシーが保たれています。他のお客さんとの距離が近いお店ではノートパソコンを開いて作業していると隣の人の邪魔になる気もするし、中身を見られるのでは? と気になりますよね。でもルノアールではそれがなく、仕事や作業が抜群にしやすい。

――確かについつい長居したくなりますよね。

山内:他のお店だと回転率とか客単価とか気にしてしまって、長居すると申し訳ない気分になってしまう。でもルノアールはなかなか満席にならないから、変に気を遣わないで使えるのも魅力かと。

 ホスピタリティの部分では、注文が済んだら飲み物を席に運んだり片づけたりはセルフで、というチェーン店が多い中、ルノアールは注文から片付けまでフルサービスの喫茶店。

 店員さん一人一人の接客も本当にしっかりしている。友人とルノアールの女性店員さんはみんな長女なんじゃないかと話をしたくらいです(笑)。

――しっかり者=長女という(笑)。慣れないとあまりに丁寧で逆に恐縮してしまうこともあるのではないでしょうか?

山内:確かにそれはあるかもしれません。特にしばらくすると出てくるお茶は慣れないうちは「早く退席してほしい」という合図に感じてしまうかも。

 正直、私も最初は「これは京都でいうぶぶ漬けかな?」と思ったりもしたんですが、このお茶、お代わりが出てくる(笑)。しかも出すたびに注ぎ足すのではなく、新しいものに変えてくれるんです。

――そこまで丁寧なのはルノアールなりの理由があるんでしょうか。
 
山内:これは本社で聞いてみたんですが、「コーヒーがなくなっても長居してもらえるように」という「空間提供」の概念が根っこにあるからこそのサービスだそうです。最初は慣れないかもしれませんが、慣れてくると「長居していてもいいんだ」って気持ちになってきますよね。この感覚はルノアールでしか味わえないのではないかと。

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