今あえて「ヤクザ社会」に飛び込んだ若者、それぞれの理由
ひと昔前まで、ヤクザがリクルートしていたのは、地元の暴走族で名を売ったイケイケの不良少年たちだった。いわゆる「エスカレーター方式」で渡世入り(ヤクザになる)する王道コースである。
ところが、1992年の改正暴対法や2000年代以降の暴排条例の施行によって、ヤクザを取り巻く社会環境は激変。銀行口座は凍結され、賃貸アパートすら借りれなくなったヤクザは、予備軍である若い不良たちから「割に合わない」と認識されてしまい、裏社会の花形から不人気職業に転落。
代わって半グレと呼ばれる新たなアウトロー勢力が台頭するなど、ヤクザは冬の時代に突入している。そんな氷河期のヤクザ社会に、あえて飛び込む20~30代の若者がいるのも事実だ。彼らはどうしてヤクザの道を選んだのか。
20代で裏社会に飛び込んだきっかけ
アウトロー取材に携わる実話誌記者A氏が末端組員の実態について語る。
「私が知る30代の関西ヤクザは、極貧の家庭に生まれ、酒に溺れた父親から毎日のように暴力を振るわれていた。その影響から、小学生で覚せい剤を打ったこともあったそうだ」
そういった若者がヤクザになる理由をA氏は「過酷な生い立ちが原因」と分析する。
「やがて父親の暴力に耐えることができなくなり、家出同然の身で繁華街を徘徊していた時に、今の兄貴分に拾われ、衣食住を世話してもらい、気がつくとヤクザになっていたらしい」
そもそもヤクザとは、盃で契りを交わす疑似血縁社会。つまり他人同士が「親子」や「兄弟」になるのだ。不幸な生い立ちが原因で寂しい思いをしてきた者にとって、この疑似血縁を土台にした共同体は、新しい家族であり、自分自身の居場所となるわけだ。
親がヤクザだと実子もヤクザになることが多い
だが、世間知らずの不幸な若者が人情に弱いというのはヤクザも見抜いている。彼らの面倒を見る代わりに、子分として、絶対的な縦社会で生きることを強いている。別のベテラン実話誌記者B氏が語る。
「実の親がヤクザの場合、その実子もヤクザになることが多い。幼少の頃から、派手な刺青や小指の欠損、さらに抗争事件など、リアルな極道の世界を目の当たりにして、すっかり感化されるパターンだ。
しかも実父が一家を率いる親分なら、強力なコネのある縁故採用みたいなもの。ゆくゆくは組の跡目を獲れるという皮算用もあるだろう」
一方、末端組員に待ち受けるハードさについては現実をこう話す。
「元漁師だという20代の在京団体組員がいるのですが、いつもシノギに困窮しているようでした。酒が入って酔っぱらうと『金にならないことばかりやらされるッスよ。しんどいやめる』って、口グセのように言ってましたよ」(B氏)