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オフィスの「フリーアドレス化」が中途半端な結末で終わる要因

学び

 多くの会社では上司、部下、新入社員で仕事をする机や席が決まっています。しかし、昨今、自分の固定席を設けず自由な席に座って仕事をする「フリーアドレスデスク」が広まっています。人事・組織変革、能力開発のプロである山口博さんにその背景を聞きました

フリーアドレスが形骸化している

会議

※画像はイメージです(以下同じ)

 オフィスのフリーアドレス化が進んでいる。社員の執務するデスクを指定しないで、どのデスクで仕事をしてもよい方式だ。担当や職位の垣根が出来ないようにする効果を期待してのことだ。

 しかし、フリーアドレスにしても、いつの間にか、誰かが自身の書類を置きっぱなしにし始めると、その連鎖が広がり、どの席に誰が座るのかが固定してしまって、指定席と何らかわらなくなってしまうケースもある。

 私がサポートした企業のケースでは「上下や左右の垣根を取り払うぞ!」という社長の掛け声で、社長や役員も含めてフリーアドレスにしたのは良いが、結局、社長の書類の整理がつかず、社長の席はフリーアドレスの一角に固定されてしまったという事例もある

 職位にかかわらずフリーアドレスにするプランは、これまで職位が上がるごとにデスクや椅子の調度が豪華になっていた上位職位のメンバーの反対に合って頓挫することもある。

フリーアドレスは経費節減目的だけなのか

 自由な働き方を標榜し、ビジネス革新を生み出すことを事業としているある企業は、実は社内では、フリーアドレスを実施したものの、上位職位のメンバーの反対に直面した

 結局、妥協の産物として、役員は役員用の革張り椅子の円卓でのフリーアドレス、管理職はブース席の中でのフリーアドレス、リーダー層は1デスクを1人で使用するスペースでのフリーアドレス、一般社員は4デスクを5人で使用するスペースでのフリーアドレスと、職位別の格差を継続したフリーアドレスを実施することになった。なんとも片手落ちの結末だ

 もとより、フリーアドレスの席数が社員数より圧倒的に少なく、早く出社しなければフリーアドレスの席がなく、リフレッシュスペースのカウンターや、近くの喫茶店で仕事をせざるを得ないという笑えない実例もある。

 これでは、社員のためではなく、「経費節減のためだけにフリーアドレスをしているだけです」というメッセージを会社が社員へ送っているようなものだ。

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