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電話が苦手な若者が多いのはなぜ?意外な理由と克服法-『電話恐怖症』 書評

学び
『電話恐怖症』 大野萌子著 朝日新書 書影

ライフワークとしてブックレビューを長年執筆する経済ジャーナリストが、話題の本を紹介。今回は、産業カウンセラーとしての長年の現場経験を持つ、日本メンタルアップ支援機構代表理事、大野萌子氏の著書『電話恐怖症』 (朝日新書)です。

電話をする機会は大幅に減った

刺激的なタイトルの本だが、日常生活の中で電話をする機会は、家でも職場でも以前と比べて大幅に減っている。スマホの普及で、以前なら電話で伝えていた内容、たとえば待ち合わせ場所や時間などの情報を伝達するにはメッセンジャーツールやメールで送れるようになり、必ずしも電話する必要がなくなった。

電話をする機会が減れば、電話でコミュニケーションする機会も少なくなる。 この結果、電話を恐いものと思う人が出てくるのはやむを得ないだろう。

街の中で観察していても、電話をしている人は以前に比べて格段に少なくなった。 特に若者が電話している姿はなかなかイメージできなくなっている。電話するにしてもスマホがほとんどであり、固定電話を使う機会は少ない。有線の電話にかかってきた電話を取り次いで本人に渡すという場面も少なくなっているので、いざ若い人がそうした機会に直面したら戸惑うのもやむを得ないかもしれない。

こうした電話に対する一種の抵抗感は、伝統的に電話のマナーに厳しい日本独特の特徴だろうという印象があったが、本書はアメリカなど世界各国で同じような傾向があると指摘する。

電話に苦手意識や恐怖感を抱くワケ

確かに電話をすることは気を使う作業である。 目に見えない相手と声だけでつながっている環境で、 声を頼りに反応しないといけない。 瞬時に相手の言葉を理解し、自分も応答する必要がある。 日常的にそうした環境にいれば慣れる部分もあるが、電話する機会が減ってくると訓練の機会も少なくなり、 苦手意識や恐怖感を覚えるという事情も理解できる。

たとえば、ある一定年齢以上の人=幼少期に家に黒い固定電話があった時代に育ったような人たち=には、電話をかけるときは「もしもし」と呼びかけ、受けるときは名前を名乗る、という一般的なイメージが刷り込まれているが、最近の若い人の中には、適切な電話の受け方や返答のしかたがわからない人もおり、年齢によって電話に対する意識は大きく異なる。

電話に対する苦手意識を取り除く方法

電話に対する苦手意識を取り除くにはどうすればよいかについて本書は、まずは家族や気心が知れた友人に着信音を鳴らしてもらうところから始めて段階的に慣れていく方法や、着信音が気になる場合には自分にあったものに変える、周囲の目が気になる場合は場所を移し、自分が落ち着く場所や個室からかける、などの方法を提案する。

電話はこちらが意図しなくても、相手の時間を奪ってしまう側面があることは否定できないため、 最近はそれを気にする人も増えている。 一方で、メールやメッセンジャーツールと違って多くの情報を短時間で的確に伝達できる特徴もあり、緊急時などには大きな力を発揮する面がある。そうした点からも、電話が苦手な人でもある程度慣れて、うまくやり取りできる力を持っているにこしたことはない。

若い世代に電話が苦手な人が多い事情は理解できるが、逆に言えば、しっかりとしたコミュニケーションができれば「若いのにしっかりしている」と評価され、自分の印象や価値を高める武器として使える。本書は若い世代が電話との向き合い方をあらためて考えるきっかけになるだろう。

『電話恐怖症』 大野萌子著 朝日新書 924円(税込)

在京の大手メディアで取材記者歴30年。海外駐在も経験。

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