オール(徹夜)や寝不足の翌朝「あのシュワシュワ」が飲みたくなったらオジサン化のサイン
年々、オール(徹夜)がしんどくなってきていないだろうか? まだまだ若いと思っていても30代以降になると、徹夜をしても体がもたなくなりがちだ。加齢と共に、徹夜後にあるサインが見られたとすれば、もはや「オジサン」の領域に足を踏み入れているかもしれない。
今回は、睡眠と身体の健康との関係について詳しい一般社団法人睡眠栄養指導士協会代表理事の河野記代子さんに、加齢と共に出てくる睡眠関連の「オジサン化」のサインと、徹夜後のダメージが加齢と共に大きくなる理由を、ライターの一ノ瀬聡子が聞いた(以下、一ノ瀬聡子の寄稿)。
「今の自分では徹夜は無理」と脳が指令を出す
一般的に、年齢を重ねると徹夜がしにくくなる。若い世代の多いbizSPA!フレッシュ読者にはまだピンとこないかもしれないが、徹夜後のダメージが大きくなる理由は複数あると河野さんは語る。
「年齢を重ねると、身体的な面だけでなく、脳内に蓄積された『睡眠圧』に耐えられなくなります。睡眠圧とは、目が覚めている間、脳脊髄(せきずい)液の中に睡眠物質がたまっていく身体機能の1つです。睡眠物質がたまるほど眠気が強くなります。
また、年齢を重ねるにつれて、過去に徹夜した時の身体的負担の記憶が脳に蓄積されていくため、徹夜になりそうになると『今の自分の体力では徹夜は無理だ』と、無意識に脳が指令を出します。そのため、気持ち的にも、年齢と共に徹夜が難しくなります。
さらに言えば、副腎疲労症候群(以下、副腎疲労)も、徹夜がしんどくなる原因の1つです。副腎とは、腎臓の上に位置する50種類ほどの重要なホルモンを分泌する臓器です。
副腎疲労は、その副腎が疲弊して生じる諸症状を指します。副腎にストレスがかかると、対応するためにコルチゾールというホルモンを分泌しますが、強いストレスが連続すると、コルチゾールを過剰に分泌するため疲弊してしまうのです。
副腎疲労が進むと慢性的な疲労状態となり、徹夜がよりつらく感じるでしょう」(河野記代子さん。以下、河野)
要するに、加齢と共に徹夜が難しくなる仕組みがきちんと体内に存在するのだ。
「実際に無理して徹夜できたとしても、翌朝の午前中に集中力の低下を感じたり、疲労感が高まったりすれば、コルチゾールが正常に分泌されていない、つまり副腎が疲労している可能性があります。
コルチゾールは朝に最も分泌されます。人を覚醒させ、やる気を出させてくれるホルモンです。年を取るほど副腎疲労は進むため、集中力の低下や疲労感の高まりは『加齢だからもう、徹夜なんて無理はしない方がいい』というサインを体が出していると言えるでしょう」(河野)
徹夜NGを知らせるドリンク
しかし、疲労感や集中力の低下は、あくまでも感覚的な話だ。「加齢なんだからもう徹夜なんて無理はしない方がいい」という脳や体の要注意サインに気付ける、もっと分かりやすい変化はないのだろうか。
「副腎疲労の初期段階では、疲労感や朝の目覚めが悪いなど、軽い睡眠の悩み程度で気が付かないかもしれません。しかし、食欲不振、砂糖・カフェインなどの欲求過多、下痢、アレルギー症状などのさまざまな症状が徐々に出てきます。
プラスして、集中力が低下し、疲労感が高まった時に、すぐにやる気を起こさせてくれそうなエナジードリンクを欲するようになれば、徹夜NGを知らせるサインと言えるかもしれません」(河野)
どうして、エナジードリンクなのか。
「エナジードリンクはすぐに元気になるイメージがありますし、エナジードリンクを実際に飲めば、コルチゾールがドバっと分泌されると分かっています(※)。
睡眠不足で集中力が切れがちな中でも、仕事などでやる気を求められる40-50代までは、エナジードリンクに頼りたくなるかもしれません。
しかし、副腎疲労を放置していると、大きな病気などにやがてはつながるリスクがあるので要注意です」(河野)
健康への永久切符
河野さんは、加齢やNGサインにかかわらず、徹夜は避けた方がいいという。
「徹夜は、言うまでもなく健康に良くありませんので避けましょう。また、徹夜に限らず、普段から朝の寝起きがつらくなった、睡眠の質が低下しているなと感じたら、副腎疲労を疑ってみてもいいかもしれません。
コルチゾールは通常、夜中には分泌されないようになっています。しかし、現代社会のストレスや不規則な生活による自律神経の乱れが原因で、寝入りや睡眠の真っただ中にもコルチゾールが分泌されてしまうケースもあります。
そのせいで、脳や体が十分に休まらない、質の悪い睡眠につながっている人も居ます。
良質な睡眠は、健康への永久切符のようなものです。徹夜は避け、日々の睡眠を大切にして元気に過ごしましょう」(河野)
最後に、睡眠の質を上げる方法として、河野さんの専門分野である栄養面から対策を教えてもらった。
「タンパク質・脂質・糖質・ビタミン・ミネラル・食物繊維をバランス良くしっかり取りましょう。特に、ビタミンB群・ビタミンC・マグネシウム・亜鉛・タンパク質は積極的に摂取してください。
睡眠ホルモンであるメラトニンの原料(セロトニン)の8~9割は腸でつくられていると言われます。腸内環境のケアも睡眠の質向上のために意識しましょう。
食物繊維や乳酸菌を含む発酵食品、海藻、野菜、果物、大豆製品、チーズなどの積極的な摂取をお勧めします」(河野)
「最近、徹夜するのがしんどくなってきた」「徹夜明けの午前中は集中力が落ちる」と感じているなら加齢による徹夜NGのサインかもしれない。副腎疲労を気遣い、無理はほどほどにしたい。
[取材協力]
河野記代子
一般社団法人睡眠栄養指導士協会代表理事
1979年(昭和54年)3月生まれ。専門学校を卒業後に渡豪し、3年を過ごした後にエステティックサロンを開業する。その後も、都内に鍼灸(しんきゅう)院、整体院をオープン。38歳の時に関節炎がひどくなったため、ミドルエイジからも健康に生活するためにと睡眠栄養指導士の資格を取得。睡眠の質向上には脳と腸への深い理解が必須と実感し、睡眠・脳・腸・遺伝子に関して学べる資格習得スクールを開校した。睡眠栄養指導士協会では講師として従事し、2022年(令和4年)10月より睡眠栄養指導士協会代表理事に就任した。
[参考]
※ 御川安仁著「疲れがとれない原因は副腎が9割」(フォレスト出版)
[取材・文/一ノ瀬聡子]