膨大なアプローチに女性が疲れがち「出会えない男子」こそ知りたいマッチングアプリの真実
私たちの生活にすっかり定着したマッチングアプリ。ここ数年間で、マッチングアプリユーザーは急増した。とはいえ、いざ始めてみたものの、最良の人となかなか関係がつくれず、ちょっと疲れている人も中には居るはずだ。
非アクティブなユーザーが増えれば、マッチングアプリを運営する企業にも影響が生まれる。現に、マッチングアプリ市場での生き残りは簡単ではないらしい。
AI恋活婚活アプリ『バチェラーデート』を運営する株式会社バチェラーデートが7月中旬に公開した調査結果によると、2022~2023年の1年間におけるマッチングアプリのサービス生存率は約60%。半分以上のマッチングアプリは早々に退場するレッドオーシャンと化している。
今後、マッチングアプリがどのように変化していくのか、ユーザーの側からしても注目したくなるはずだ。
そこで、株式会社バチェラーデートの代表取締役を務める祖山由佳氏にマッチングアプリの見通し、さらには「マッチングアプリは男性ユーザーに不利なのでは?」など、ユーザーにとって関心の高い疑問点を率直に聞いた。
最良の人と出会えないユーザーにも耳寄りな情報を聞けたので、最後までぜひ読んでもらいたい。
数年前は広告の審査が通らない
まず、今現在マッチングアプリが私たちの生活に定着した背景として、「以前からアメリカやヨーロッパなどでは普及していました。日本でも5年ほど前から、現在業界をリードしているペアーズ、Tinder、Omiai、タップル が出そろったタイミングなのかなと思っています」と解説を始める。
「私達も当時はテストマーケティングをやり始めていた時期です。まだまだマッチングアプリの認知度は低く『出会い系サイトと何が違うの?』という印象も強かったため、なかなか広告掲載の審査が通らない状況でした。ただ、当時の主要企業が売上を公開して 『ちゃんと運営しているから安心して!』とアピールしたり、実際に交際に発展したカップルのレポート記事を掲載したり、“アーリーアダプター(新しい商品・サービスなどを比較的早い段階から購入・利用する消費者層)”が利用して周囲の人に広めたりなど、そういったことの積み重ねで“マッチングアプリ=出会い系サイト”という認識を改めることにつながりました」
また、コロナ禍の影響もとにかく大きく、「コロナ禍では否応なく出会いの機会が減りました。それと同時にテレワークやオンライン飲み会などオンライン上でコミュニケーションをとることが一般化したことにより、オンラインでの出会いに対する抵抗感が下がりました」と話した。
地域・職業限定のマッチングアプリも
マッチングアプリが市民権を得た今日このごろ。マッチングアプリ業界はどのようなに変化しているのか。祖山氏は「とにかく細分化、多様化しています」と回答。
「普及に伴い、理想の相手を探したり、メッセージをしたりといったことが負担になる“マッチングアプリ疲れ”を感じる人が増加中です。そのため、弊社のような相手もAIの自動マッチングで決め、デートの場も自動でセッティングしてくれるマッチングアプリアプリのニーズが高まっています。加えて、ユーザー増加により、様々なニーズを満たすマッチングアプリが続々と出てきており、地域限定や医療従事者限定、ペットを通してマッチングするものもリリースされています」
いろいろなマッチングアプリが登場していることがわかった。ただ、サービスの生存率が60%ということは入れ替わりが激しいと言える。企業側としては1年間継続して運営することさえ大変そうではあるが、生き残りやすい企業の特徴はあるのか。
「やはり資本力が重要です。また、ユーザーの需要をどれだけ把握できているかも必要不可欠。弊社でも3ヶ月に一度はユーザーさんからヒアリング調査を実施しています。マッチングアプリが生活の一部になったからこそ、ニーズの複雑化が止まりません。そのニーズにいかにより添えるかが重要になります」
いかに女性をアクティブにするかが課題
次に男性ユーザー目線の質問をぶつける。マッチングアプリが普及したということは、片手間で利用する人が増えた可能性が高い。基本的にはマッチングアプリは男性有料、女性無料。お金を払っていない女性は真剣度が低く、男性にとってマッチングアプリは出会いツールとして最適ではないのではないか。
「女性は真剣度は低いとは思いません。しかし、一般的にマッチングアプリは男性の利用者数が多く、女性は多くの男性からアプローチを受け、メッセージやいいねを返すプレッシャーなどからマッチングアプリに疲れ、非アクティブになりやすい傾向にあります。そのため、デートにつながる機能や、キャンペーンを実施するなど、女性をいかにアクティブにさせるかは各社ともに頭を悩ませています」
ユーザー激減のリスクはあるが女性も有料化する方向でも良い気もするが、「海外では男性有料、女性無料というケースは少なく、日本特有の文化と言えます。また、先行するサービスの女性無料という形が、一般的な認知として広がっているため、なかなか料金設定を変更するのは難しいかもしれません」と口にした。
恋愛弱者には無理ゲー?
男女別のマッチングアプリ疲れの理由からわかる通り、“女性は選ぶ側”になりやすく、恋愛強者の男性でなければ出会うことは難しい気もする。裏を返せば、容姿や年収があまり魅力的ではない恋愛弱者の男性は全く出会えない可能性も疑われるが、祖山氏は「そうは思っていません」という。
「マッチングアプリは多様化しています。例えば、一緒にゲームをしながら相互理解を深めたり、メタバース内で交流したりといった容姿などの要素を伏せてやり取りできるマッチングアプリも珍しくありません。また、容姿や年収といった要素は当然重要ですが、食事のマナーやコミュニケーション能力といった、一緒にいた時の雰囲気や態度を重視する女性は多いです。
もちろん恋愛強者が多くの女性と交流しやすい傾向は否定できません。とはいえ、多種多様なマッチングアプリがリリースされており、自分の強みを活かせるマッチングアプリを見つけることができれば、恋愛が苦手なことをカバーできるでしょう」
マッチングアプリはオワコンか
最後に「マッチングアプリはオワコン」という声もちらほら聞かれるが、そういった現状について「出会えない人は自分に合ったマッチングアプリと出会えていない印象です」と分析。
「今回調査結果を発表したのですが、それと一緒にマッチングアプリのカオスマップも掲載しました。それを見た人達が『こんなにマッチングアプリがあるなんて知らなかった』という声がSNSでとても多かったです。素敵な相手を見つける前に、自分に合ったマッチングアプリを見つけること、もっと言えば『マッチングアプリはいろいろある』ということを知っているかどうかが今後は重要になっていきます」
自分のニーズや強みを理解して、そこからマッチングアプリを探すと恋愛弱者であっても十分チャンスがあるのかもしれない。どういったマッチングアプリがリリースされたのかを細かくチェックしておくと、より良い出会いを手繰り寄せることができそうだ。
<取材・文・撮影/望月悠木>