『silent』見逃し配信も話題のTVer、なぜ“伸び悩み時期”を突破できたか
多様化するユーザーの趣味志向に合わせるために、映画やドラマ、アニメ、バラエティなど、配信コンテンツは非常に多岐にわたっている。そんななか、国内最大級の民放公式テレビ配信サービス(VOD)として知られるのが「TVer(ティーバー)」だ。
2015年10月にサービスを開始以来、堅調な成長を続けており、累計アプリダウンロード数は5000万を超える。また、Zホールディングスグループと1月31日、業務提携に向けて基本合意したことも話題だ。好調な理由やコロナ前後で起きたユーザー変化について、株式会社TVer サービス事業本部 副本部長の中島和哉氏に話を聞いた。
違法動画や若年層のテレビ離れを防ぐ
2015年は動画配信サービスの黒船と称されたNetflixやAmazon Prime Videoといった海外企業の参入が相次ぎ、「VOD元年」といわれるほど関心が盛り上がった。こうした状況下でサービスを開始したのがTVerなのだ。
だが、「打倒ネトフリ」や「打倒アマプラ」といった海外勢を意識して立ち上がったのではなく、「違法動画の撲滅や、若年層のテレビ離れを食い止めるのが主目的だった」と中島氏は話す。
「当時はインターネット広告費が増大し、スマホシフトが加速していた時期でした。また、全録レコーダーの普及でテレビの番組表を遡って録画できたり、YouTubeへの違法動画アップロードが問題視されたりと、テレビ業界は変革を迫られていました」
始まったのは瀬戸際のタイミング
「2015年10月にTVerを始めたことは、今振り返ってみても瀬戸際のタイミングだったと感じています。NetflixやAmazon Prime Videoが同年9月にサービスを開始してから、その1か月後にTVerがローンチしたわけですが、もう少し遅いタイミングだったら、民放キー5局(日本テレビ、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビ)が共同で動画配信サービスに取り組むことはなかったのではと考えています」
TVerの立ち上げ初期は、各局から10番組ずつ計50番組からスタートした。「半年で100万ダウンロード」を目指していたそうだが、蓋を開けてみればわずか20日間で100万ダウンロードを達成したのだ。