<漫画>漫画家の卵が住むシェアハウス。主人公には誰にも明かせない秘密が
新人漫画賞を次々に獲得し、順調に漫画家としてステップアップを重ねていった、うらたにみずきさん。その後、ストーリーテラーとしての才能を評価され、漫画家原作者として、レコード会社を舞台にした『アンサングヒーロー』(講談社)や、世に出ようともがき続ける漫画家たちを描く『カスミ荘の漫画家志望達』(講談社)を手掛けることに。
前編では、うらたにさんが歩んだ漫画家としての経歴と、漫画家原作者として活動するようになったきっかけを紹介した。
後編では、原作者として担当した作品に共通する“陰ながらも懸命に生きる”人物たちを生き生きと描く創作秘話を通して、うらたに作品の魅力を紐解いていく。また、インタビューと共に、とある秘密を持った主人公が登場する『カスミ荘の漫画家志望達』の第1話を紹介する。ぜひ最後まで目を通していただきたい。
【インタビュー前半】⇒<漫画>型天才歌手を世界一に。レコード会社のリアルを気鋭の原作者が描く<漫画>
一般的に知られていないからこそ描きたかった
──『アンサングヒーロー』は、編集者の方からのご提案でスタートしたそうですね。その企画を聞いたときの感想はいかがでしたか?
【マンガ】⇒『アンサングヒーロー』を読む
うらたにみずきさん(以下、うらたに):レコード会社は知っていても、アーティストを発掘するA&Rという職業は、一般的には知られていないと思ったので、これは描く意味があるなと。
──最初から興味を持たれたのですね。その時点では、どれほどの物語は決まっていたのでしょうか?
うらたに:大筋はあったのですが、それだけでは物語の土台は組み立てられないので、レコード会社の方に取材するところから始めました。「どんな仕事内容なのですか?」っていう基本的なところからです。あと、描いたネームを確認していただいたりもしました。
丹念な取材と自身の経験を物語に
──そうした取材で得た情報をもとに、色々と発想をめぐらせながら物語を作っていくと?
うらたに:基本的にはそうですね。ただ、物語を考えているうちに、A&Rとアーティストの関係は、漫画家と編集者にも似ているなと思うようになったんです。僕が創作したものに対して、編集の方からフィードバックをもらったり、重要なアイデアをもらったりしながら、作品を仕上げていく。こうした関係は、まさにアーティストとA&Rにも通じると。その関係性をうまく物語に盛り込むことで、よりリアリティーが強くなったり、強いエピソードを生み出したりできるようになっていきました。
──そういう意味では、主人公の後免一朗に発掘してもらったアーティストの柊ジャムが、音楽業界の体質に苦言を呈する場面がありますね?「アーティストをデビューさせるために、企画書を作成する意味は?」という。あのシーンは、うらたにさんの思いも含んでいるのですか?
うらたに:いえ、それは無いですね(笑)。あくまでも、あの登場人物ならどう思うか?という視点で物語やセリフを考えていますので。僕自身の考えを反映させたワケではないですよ。
──その後、原作を担当された『カスミ荘の漫画家志望達』は、漫画業界が舞台なので、うらたにさんの経験がかなり反映されているのですか?
うらたに:こっちの作品は、あまり自分の経験を重ねている部分は少ないですね。それよりも、専門学校時代に出会った先輩のお話がかなり参考になりました。色々な立場の漫画家とお付き合いがある方だったので。