感染再拡大でも「テレワークを拒む」のは誰か?元凶は経営層の意識の低さにも
それまでの日常を取り戻したかに思えたのもつかの間、オミクロン株の流行により、2022年の年明けとともにすさまじい勢いで感染者が増加している。しかし、コロナ禍がキッカケに普及したテレワークが縮小・廃止され、以前のように出社を強制されるケースは少なくないと聞く。実際、通勤時間帯の駅は人であふれかえっている。
なぜこういった矛盾が起こるのか? ワークスタイルや組織開発を専門とする実業家であり、『どこでも成果を出す技術 ~テレワーク&オフィスワークでなめらかに仕事をするための8つのスキル』(技術評論社)の著者である沢渡あまね氏(@amane_sawatari)に話を聞いた。
仕事の勝ちパターンが見つかった
まずテレワークのメリットとして「通勤という個人にも企業にもお金にならない行為をなくしたことは大きいです。また、ハラスメント被害を回避でき、馬の合わない同僚や上司と必ずしも毎日顔を合わせなくて良くなったことも、メンタルヘルスに良い影響を与えました」と、沢渡氏は言う。
「特筆すべきは『以前よりも仕事に集中できるようになった』と考える人が多いことです。私はこれを“仕事の勝ちパターン”と呼んでいます。例えば、何かを議論する場合はオフィスで顔を合わせたほうが捗ることもあると思いますが、事務作業であれば誰もいない空間のほうが良いかもしれない。
このように人や業務内容によって勝ちパターンは変わりますが、日本では同じ時間帯に同じ場所に集まって仕事をすることが常識で、どこにどのようか勝ちパターンがあるかを知ることはできませんでした。しかし、テレワークの普及により『この業務はテレワークのほうが効率的だな』というような、仕事の勝ちパターンを見つけたビジネスパーソンは多いです」
デジタル化は外部との交流を加速させる
そして、従業員が時間や場所を自由に選択して働く“ABW(Activity-based working)”が世界的に注目されており、「それぞれの業務内容に応じた最適な労働環境を企業側が従業員に提供することにより、生産性向上はもちろん、ウェルビーイングにつながります」と世界のトレンドを説明した。
続けて、「テレワークを廃止すると、外部とのコラボレーションが生まれにくくなります」とデメリットを口にする。
「同じオフィスに閉じこもっていると、外部の情報が入りにくく、外部と交流する機会が減ります。組織の課題を解決してくれる可能性、新しいビジネスモデルを生産する可能性の芽を摘みかねない。なにより出社を前提にすると、出社できる人しか勤務できず、他県に住む能力の高い人を採用できない。一人ひとりの成長の機会が奪われるだけでなく、人手不足を招く恐れもあります」