楽天、フェイスブックを経て「クラフトビール」で起業。異色のキャリアの原体験とは
国内のクラフトビールやクラフトジンを製造する醸造所や蒸留所が増えつつあり、また世界的なトレンドに目を移しても、ハードセルツァーのようなローアルコールで飲みやすいお酒が若年層を中心に支持されるようになってきている。
こうしたなか、日本発のクラフトビールブランドとして2020年1月に誕生したのが「CRAFTX」である。同ブランドを手がけるMOON-Xは、米国ビックテック企業の一角を担うフェイスブック ジャパン(現メタ社)の代表を務めた長谷川 晋さん(@ShinHasegawa8)が2019年に創業した。
世界を席巻する「テクノロジー」の会社から、なぜクラフトビールを作る「ものづくり」の会社を立ち上げたのか。これまでのキャリアや起業した背景、今後の事業展望について、MOON-XのCEOである長谷川さんに話を聞いた。
20代で将来の人生プランを作っていた
長谷川さんは、大学卒業後に保険会社へ入社し、法人営業を経験したのち、大手外資系消費財メーカーのP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)に転職。「パンパース」や「ジレット」、「SK-II」などの消費財におけるブランドマネジメントやマーケティングに10年間従事し、着実にキャリア形成を図っていた。
「私が26歳の頃に、自分の将来像を思い描き、人生プランとして書き出したんです。そのきっかけになったのが、P&Gの緻密に体系化されたプロジェクトマネジメントのやり方でした。ブランドのゴール設定を決め、マイルストーンを敷いて、1つひとつのアクションに落としていく。この工程がとても衝撃で、現場で働いていくうちに、いつしか『自分のキャリアにおける成功確率も上げたい』と思うようになりました」
キャリアの最後は「起業する」と決めた
自分の担当するプロダクトやサービスのみならず、自らのキャリアもプロマネしていく。このような考えのもと、長谷川さんは思い描くキャリアのレールを常に意識しながら、働く場所を変えてきた。
「人生の成功を定義し、『キャリアの最後は起業する』と決めたのが、今の会社を立ち上げる背景になっていますね。ジョブチェンジする際も、給与や待遇以外に自分の考える人生プランを達成できるかどうかも含めて転職先の会社を選ぶようにしていました」
長谷川さんがP&Gの次に転職したのは、インターネット黎明期からテクノロジー業界を牽引する楽天だった。P&Gで培ったマーケティングの知見を生かし、楽天では上級執行役員という肩書きのもと、グローバル17か国および国内全体のマーケティングを統括する重責を担っていた。
楽天という会社でサービスをグローバルに届けられるインターネットビジネスの可能性や将来性を感じながら、人生プランの最終地である起業について考え始めた矢先、ファイスブックジャパンの社長オファーが舞い込んだという。起業の道に進むのか、成長著しい「ビッグテック」企業で社長の経験を積むのか――。