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「仕事中毒」になる人の意外なメカニズム。原因は脳のしくみに

学び

 初めて「それ」をしたとき、ドキッとした、安心した、快感だった、得した感じがした、好きになった、などの感覚が起き、そしてもう一度「それ」をした。2度が3度、3度が4度と繰り返すうちに、ついに「それ」に「ハマっ」た人は少なくないのではないでしょうか。

脳

※イメージです(以下同じ)

「ハマる」とは、コトやモノや人に関心が固着してしまうこと、繰り返してしまうこと、止められなくなることを言います。恋に落ちると言いますが、それは特定の相手に「ハマる」ことだと言えます。

 NPO法人「ヒューマニティ」理事長である私は、セラピーを用いてストーカーを初めとするさまざまな「ハマリ」に対応して来ました。ところが、セラピーをもってしても対処できないほど強力に条件付けられた「ハマり」には、過去には、対処する手立ては世界のどこにも見当たらない状況でした。

※本稿は『やめたいのにやめられない 悪い習慣をやめる技術』(小早川明子・著、フォレスト出版)を再構成したものです。

人間の脳は「動物的」と「人間的」

 ロシアのパヴロフ(1849~1936年)という医学・生理学者は、実験により餌の時間に必ずベルを鳴らすと、餌が出なくてもベルが鳴れば犬はよだれを出すという現象から、動物と人間の神経活動に法則=行動原理があることを発見しました。「信号系学説」とも「条件反射学説」とも呼ばれる学説です。

 パヴロフは人間の脳には2つの中枢(司令塔)たる神経系があると説明します。それは、「無意識的」な神経系と「意識的」な神経系です。前者を「第一信号系」、後者を「第二信号系」と呼びます

「第一信号系」は、人間だけでなく動物全体にも備わっている、いわゆる「動物的な脳」で、環境から入力された「刺激」に対して、定まった中枢作用が働き、環境に「反応」を出力するという脳です。「刺激」と中枢作用と「反応」が「反射」を構成します。

 ある「反射」に対して「刺激」が入り、「反応」が出て、その「反応」が新たな「反射」の「刺激」になって入り、「反応」が出て、と次々に「無意識的」に「反射」が連鎖するという「反射連鎖」により、行動をコントロールするシステムです。

2つの脳がお互いに影響し合っている

ビジネス

「第一信号系」は「防御」「摂食」「生殖」という生存を支えてきた行動を司るシステムで、それらに成功した行動が同じように再現するようにします。また、過去に失敗した行動は再現しないようにして、徐々に変化しながら、環境に適応します。

「第二信号系」は、数百万年前に一部の動物が起立するようになり、手を使って作業を行い、失敗を重ね、成功に至るという作業を繰り返したことにより生じ、発達した「意識的」なコントロールシステムです。思考し、評価し、判断し、計画し、予測し、決断し、実行することを可能にする、人間だけが持つ「人間的な脳」です

 私たちは普通に暮らしていると、自分で考えて、行動していると感じています。自分の「意思」によって行動していると思っています。ところが、「意思」に反したことをしてしまうことは多く、「意思」をしっかり持てば行動を変化させたり、問題を解決できたりするものでもない事柄はあふれています。私たちが「意思」と言う言葉で表している作用は、「第二信号系」の作用なのです。人間が行動するときは、2つのコントロールシステムがお互いに影響しあっています。

悪い習慣をやめる技術

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