男性の育休が“わがまま”ではない理由。でも義務化には異論も
2019年6月、自民党国会議員の有志55人が集まって「男性の育児休業義務化」を推進する議連が発足した。
これまでは「育児・介護休業法」「男女雇用機会均等法」によって、育休の取得要件や休業中の賃金などを記した法制度はあったが、あくまでも利用者をサポートするものであり、義務化されていたわけではない。
そんななか、育児休業に詳しいリクルートワークスの大嶋寧子主任研究員は「男性だけの問題ではなく、日本社会全体の問題」と、報道のされ方を疑問視している。
育休中の給付金が引き上げられたことも
そもそも男性の育児休業というテーマ自体、今になって急に巻き起こったわけではない。
「2010年前後から、少子化克服や女性活躍のためにも男性の家事・育児への参加が必要という認識が高まり、厚生労働省がイクメンプロジェクトを立ち上げたり、制度改正が行われたりしてきました。
たとえば、2010年6月30日からは、男女ともに育児休業を取得する場合に、原則子どもが1歳になるまでの育児休業を2か月延長できる制度が導入されました(パパ・ママ育休プラス)。また、育児休業中の給付金は休業前賃金の50%でしたが、2014年4月1日以降に始まる育児休業については、最初の6か月の給付率が67%へと引き上げられています」
男性の育児休業の義務化には疑問符も
今回の「自民党有志による男性の育児休業の義務化」について、大嶋氏は「うーん」と頭を抱えながらもこう答えてくれた。
「あくまで報道によりますが、取得対象の男性社員から申請がなくても、企業側が育休を取らせる制度の創設が目指されているようです。ただ、個人の側に育児休業を取らない選択があるのか、育休を取らせる期間はどのくらいかなどが分からないので、なんとも評価が難しいです」
とはいえ、「政府による義務化」という横一列的に変えてしまうやり方に疑問もあるという。
「私自身は、仕事が属人的になっていて肩代わりができない、制度は充実していても上司や同僚に理解がないなど、職場ごとに男性が育児休業を取得できない理由は違うと思っています。だから、職場が抱えている問題点について、企業自身が考えたり、必要な対策を取れるよう国がアシストしてほしいですし、そのほうが一人ひとりに合った期間の休業を取りやすくなるでしょう。
女性活躍推進法と同じように、企業に『数値目標を含む行動計画の策定と公表』を義務付け、それぞれの職場で、働く男性が育児休業を取得しやすい環境や職場づくりが進むよう後押しするのが良いと思います」