上司のパワハラで損害賠償を請求するには?【弁護士に聞く労働問題】
日々働いていると、職場でハラスメントやトラブル、不当な扱いなど、理不尽な問題に直面することは避けられないことかもしれません。そんなとき、自分一人で対処するのは難しいものです。専門家である弁護士に相談し、法律に基づいたアドバイスを受けることで、問題をスムーズに解決する手助けとなります。bizSPA!フレッシュでは、労働問題に関するよくある質問をピックアップして取り上げていきます。
今回は、「上司のパワハラ」について、アディーレ法律事務所の岩井直也弁護士に解説していただきました。
目次
Q1. 上司から「それでリーダーが務まると思ってるのか!」「やる気がないなら会社を辞めろ!」などとたびたび言われています。これはパワハラではないのでしょうか?
法律上、パワーハラスメントとは、職場における「優越的な関係を背景とした言動」であって、「業務上必要かつ相当な範囲を超え」「労働者の就業環境が害される」行為と定義されています(労働施策総合推進法32条の2)。
上記の言動は、上司と部下という優越的関係を背景とした言動といえます。文言のみからは具体的な状況は不明であるものの、例えば必要以上に繰り返し叱責する、他の従業員がいる前で大声で叱責するなど、状況に相当性を欠くような事情があれば、「業務上必要かつ相当な範囲を超え労働者の就業環境が害される」と判断される可能性があるでしょう。
Q2. パワハラをやめさせる方法はありますか?
これをやれば確実という方法はありませんが、例えば次のような方法が考えられます。
1. パワハラをする人の上司や人事部に相談する
会社の内部の人に相談するという方法です。直接パワハラをする人にやめるように言うのは難しいケースが多いため、その人より役職が上の上司や第三者的な立場にある人事部であれば、自分の代わりにパワハラの件について事情を聴いたり、やめるよう注意してくれる場合もあります。
2. 外部機関を頼る
会社内部の人に頼っても効果がない場合は、会社の外の人に頼るのも効果的です。労働問題に関して相談できる窓口としては、労働基準監督署、厚生労働省の設置する総合労働相談コーナー、法律事務所・弁護士といったものが考えられます。
会社の内外いずれに相談するにしても、話をよく聞いてもらうために、パワハラの場面について録音やメール・メモなどによって証拠を残しておくとよいでしょう。
Q3. パワハラによって体調を崩した場合、損害賠償を請求できますか?
パワハラによって体調を崩した場合、会社及び直接の加害者に対して損害賠償(慰謝料)を請求できる場合があります。
損害賠償を請求するには、パワーハラスメント行為の存在、自身が被った健康上の損害、その損害がパワーハラスメントに起因することといった要件を立証する必要がありますので、パワーハラスメントの証拠となりうる録音データや診断書等の証拠集めをしておくことが有用です。
他方、その損害がパワーハラスメントに起因すること(因果関係)という要件は、特に心因性の体調不良のようなケースでは立証が難しくなる場合があるため、慰謝料請求を検討される場合は、その立証に役立てる観点からも、合わせて労災申請することを検討するとよいでしょう。
[協力]
アディーレ法律事務所