東南アジアのスタバに不買が飛び火。リーダーを志す若者がガザの戦闘から学びたい世界の人権意識
イスラエルとイスラム主義組織ハマスとの間で生じる激しい戦闘の影響で東南アジアの「スタバ」で不買運動が起きた。この話を聞いて、一連の因果関係と問題の背景を説明できるだろうか。
世界は今、国際協調の時代から分断の世界へ移行しつつあるという。そうした時代に生きる若手ビジネスパーソンがリーダーになるとすれば、国際情勢に関する知識と人権問題への意識の高さが必須の条件として求められるはずだ。
そこで今回は、国際安全保障、国際テロリズム、経済安全保障などを専門とする和田大樹さんに、イスラエルとイスラム主義組織ハマスとの間で続く激しい戦闘と、その戦闘に対する人権問題の訴えを教えてもらった。
実は、遠い国の話に思えて、日本企業も敏感に反応し行動している。いわば、日本企業の現役リーダーたちも国際的な人権問題を意識し、考え、行動しているのだ。
ならば、次世代のリーダーを担う若手ビジネスパーソンたちも、この手の問題に敏感になっておく必要があるに違いない。リーダーへの志を持つ人こそ、ぜひ読んでもらいたい(以下、和田大樹さんの寄稿)
イスラム教国のマクドナルドやスターバックスで不買運動
昨年10月上旬以降、イスラエルとイスラム主義組織ハマスとの間で激しい戦闘が続いている。
国際社会では、イスラエルの容赦ない攻撃に批判の声が広がっている。パレスチナ側の犠牲者数は2万7,000人を超えている。
当然、パレスチナ人(イスラム教徒)を攻撃するイスラエルへの批判は、イスラム教国家(中東や北アフリカだけでなく、インドネシアやマレーシアも含む)でも強まっている。
その影響は当然、経済活動・企業活動にも影響を与えている。例えば、イスラエル製品のボイコット運動が、イスラム教国家のネットやSNS(会員制交流サイト)で呼び掛けられ、スーパーマーケットなどではイスラエル製品が店頭からなくなっている。
また、イスラエル支持の立場を保つ米国など欧米諸国への風当たりも強くなり、イスラム教国家にあるマクドナルドやスターバックスなどへの不買運動も広がっている。
最近では、イスラエル支持の姿勢を続けている米国からもイスラエルへの不満の声が強まっている。
ひるがえって日本はどうか。実は、日本企業もこの問題に対して動き出している。
伊藤忠商事の子会社である伊藤忠アビエーション(東京都港区)が最近になって、イスラエルの軍事企業エルビットシステムズからの自衛隊防衛装備品の輸入協力に関する覚書を、2月末までに終了すると明らかにした。
この背景には、人権を軽視した攻撃を続けるイスラエルへの批判がある。イスラエル、中でもイスラエルの軍事企業とビジネスを続けていれば、自社の企業イメージが国際的に悪化する恐れを回避するためだと考えられる。
イスラエルと日本は関係が薄いように思えるかもしれない。しかし、イスラエルから半導体や電子機器などを輸入している。イスラエルをめぐる批判が今後も拡大・長期化すれば、他の製品にも影響が及ぶ可能性もあろう。
諸外国でビジネスを展開する企業に人権の配慮が求められている
こういった人権に配慮した企業の行動は過去にも見られる。ミャンマークーデターから今月で、ちょうど3年となるが、今日の軍事政権は米国などから制裁を受けている。
そのため、軍が政権を掌握して以降、ミャンマーに進出していた日本企業の撤退が相次いだ。
例えば、2022年(令和4年)1月、キリンホールディングス(東京都中野区)がミャンマーから完全に撤退すると発表し(2023年1月に撤退完了)、ENEOS(東京都千代田区)も2022年(令和4年)4月、ミャンマーでの石油・天然ガス事業からの撤退が完了したと明らかにした。
また、ロシアがウクライナへ侵攻して以降、マクドナルドやスターバックス、アップルなど世界的な有名企業が相次いでロシアから撤退を明らかにした。トヨタや日産、マツダなど日本の大手自動車メーカーもロシアからの撤退を発表した。
もちろん、現在でも、ロシアビジネスを続けている日本企業はあるが、ロシアビジネスをめぐる環境が以前のように改善される状況は短期的に戻ってこないだろう。
今後も、世界では、国家と国家の戦争だけでなく、テロやクーデターなどさまざまな事態が発生すると考えられる。諸外国でビジネスを展開する企業には人権を配慮した経済活動が一層求められている。
世界情勢を注視し自社ビジネスへの影響を意識する
世界は、国際協調の時代から分断の世界へ移行しつつある。国家間対立やクーデターなどの増加に伴い、こういった問題に日本企業が直面するケースも増えると予想される。
よって、若いビジネスパーソンとしては今後、中間管理職、経営幹部とキャリアアップを志す中で、世界情勢の行方を日々注視し、自社のビジネスにどう影響が出るかという意識を持つ必要があろう。
イスラエルやミャンマー、ロシアを観る世界の目は短期間のうちに大きく変わった。
「自分の所属する会社はこの国でビジネスを開始しようとしているが政治の長期的安定が臨めるのか」「この国でビジネスを継続しょうとしているが問題はないか」などを今から意識して考える習慣を備えておく必要がある。
[文/和田大樹]