「貧相にならないよう値上げに踏み切った」大丸松坂屋に聞く、インフレ下のおせち商戦2022
師走に入り、2022年も「おせち商戦」のラストスパートを迎えている。夏明けから、おせち料理の予約を受け付ける会社が多く、とりわけ百貨店各社は趣向を凝らした商品を取り揃え、しのぎを削ってきた。
ロシア・ウクライナ情勢や円安による輸入コスト増大の影響で、食材の値上がりを余儀なくされているなか、おせち商戦の最前線は今どのような状況なのか。今回は、大手百貨店の大丸・松坂屋でおせち担当バイヤーを務める内藤真光氏に、おせち商戦におけるトレンドの変遷や売れ筋の商品について話を聞いた。
外出制限緩和で落ち着いた「おせちのEC注文」
おせち料理といえば、昔は各家庭で手作りするのが一般的だったものの、近年はコンビニやスーパー、百貨店、飲食店などで購入することができるようになった。しかもおせち料理の種類は年々変化しており、定番の和食から洋食、中華、有名シェフや名店とのコラボ、“100円おせち”のような激安のものまで非常にバラエティに富んでいる。
こうしたなか、おせち料理における注文経路や具材、ボリュームなどは時代とともにどう変わってきているのか。内藤氏はコロナ前後を対比しつつ、次のように説明する。
「まずはコロナ前からECの需要が高まっており、特にコロナ初年度では外出自粛やステイホームが叫ばれたことによって、EC経由からおせち料理を頼むお客様が多くなりました。ただ、今年はいわばウィズコロナ3年目を迎え、外出制限の緩和がなされたこともあって、EC経由のご注文は直近2年間と比較して落ち着いてきています」
定番の和食よりも肉づくしのおせち
また、「食の洋風化」が進んだことで、おせち料理の具材も「定番」から「多様化」へとシフトしているという。
「おせち料理の定番である数の子やかまぼこ、黒豆などの和食はもちろん一定の需要がありつつ、ローストビーフやハンバーグといった『肉おせち』の人気が非常に高まっています。大丸松坂屋では以前からお肉のカテゴリーのおせち料理を販売していましたが、コロナ禍になってからは急激に伸長しており、今年も全体は前年比5%増で推移しているのに対し、お肉のカテゴリーは約60%増と肉おせちの人気を感じています」
従来のおせち料理は和食一辺倒であるゆえ、どうしても食べ飽きてしまうこともあるだろう。