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“日本一小さな村役場”で壮絶なパワハラ、「加害者は複数名いる」実態と対策方法

ビジネス

パワハラ問題を放置するとどうなる?

 パワハラで問題になるのは、暴力や誹謗中傷と行ったあからさまなものよりも、加害者は指導のつもりだったというような、グレーゾーンだ。昭和の時代なら許されてきたことが、今は大きな問題ということも少なくない。小さな組織では自浄作用が働かない場合もあるため、外部に相談するシステムが整えられている。「おかしい」と思ったらぜひ活用して欲しい。

 舟橋村の場合、役場内で防止に取り組まなかったことがパワハラを増長させたと言える。職場の問題は「これからも一緒に働いていくのだから波風立てないほうがいい」「自分が我慢すればいい」という問題ではない。

「パワハラって見ていても気持ちのいいものじゃないですよね。自分もいつされるかわからないという恐怖もあり、組織の心理的安全性が低くなります。決して1人だけの問題ではないんです。パワハラを受け入れ続けることで、失われていく大切なものもあります。『何を言っても無駄だ』という諦めムードが蔓延すると、改善はおろか新しい挑戦もしなくなり、組織としての生産性が上がりません。

 何より人は無条件に大切にされるべきだという基本的人権が傷つけられ、放置していると自分を大切にできなくなるんです。これが高じると他人に対して卑屈になり劣等感を抱いたり、素直にものごとを受け入れられなくなってトラブルを起こしやすくなります。結果的にメンタルを病むことにも。自分だけではなく、周囲や家族にも影響が出ます」(佐久間さん)

村民のために一刻も早い解決を

舟橋小学校

舟橋小学校

 人から大切にされないと、人のことも大切にできなくなる。自分がやられたように人に辛辣になってしまうものだ。他人に対して卑屈になったり、劣等感に苛まれてものごとを素直に受け取れなくなったりする。追い詰められて自死を選んでしまうこともある。

「被害を申告することで組織も健全になっていきますし、本来得られるはずの当たり前の幸せややりがいを受け取れるようになります。自分も自尊心を取り戻せるんです。証拠があると紛争解決もスムーズになりますので、録画や録音、日記などの記録をつけること、あなたの話を聴いて一緒に考えてくれる味方を見つけてください」(佐久間さん)

 今回の騒動を受けて、舟橋村議会は9月に古越村長の不信任決議を全会一致で可決、村長は議会を即日解散した。しかし10月18日に告示された村議選は、定数7人に対し、同数が立候補したため全員が無投票当選。古越村長本人は否定しているが、失職は避けられない状況となった。パワハラ問題は根深さがうかがえるこの騒動、村民のために一刻も早い解決を望みたい。

<取材・文/熊田リキ>

各種編集を経てフリーライターに。生きにくい人たちが少しでも減ることを願い、社会問題を取り上げた記事をメインに執筆している

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