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転職2年目で退職勧奨…29歳テレビ局員の進退「俺は活躍できないのか」

学び

 超一流企業に鳴り物入りで中途入社したが、スランプに苦しみ、部内では浮きまくり、孤立する人は少なくない。ついには、上司から退職を迫られ、最近は、辞めたくなる日々だという、ある男性に話を聞いた

テレビ

※画像はイメージです(以下同じ)

 今回は実際に起きた事例をもとに、純潔エリート集団への中途採用入社の是非について考えたい。本記事の前半で具体的な事例を、後半で人事コンサルタントによる解決策を掲載する。事例は筆者が取材し、特定できないように加工したことをあらかじめ断っておきたい。

事例:退職勧奨を受ける29歳、放送局D

 放送局の報道局ディレクター・石井二司(仮名・29歳)は上司である部長や副部長から退職勧奨を受けている。会議室に呼ばれ、「退職を考えたほうがいい」「残っても、活躍の場はない」と、1時間程言われる。話し合いは2か月で5回を超えた。

 石井が800倍と言われる倍率の中途採用試験に受かり、入社したのが2年前。入社後、思い描いたように仕事ができていない。部長や副部長、先輩社員と企画や番組作りをめぐり、意見がぶつかった回数は部内(ディレクター70人程)で最も多い。社内のルールが正確にわからないために交通費の清算が締め切りを超え、副部長から何度も叱責を受けた。

 部内では孤立する。同世代に退職勧奨のことを言えば「あなたの姿勢にも問題がある」と突き放される。部内のほぼ全員が、新卒で入社している。2000年前後まで数十年間、新卒採用のみだった。中途採用者は、現在も数パーセント以下。ディレクターは東大や京大など旧帝大卒が7割を占め、早稲田や慶應など私立は少ない。上智、明治、立教、同志社よりも下の入学難易度の大学卒業者は皆無。定着率は高く、35歳までに同期生(20人程)で辞めるのは2人程。

 石井は平均的なレベルの私立大学を卒業し、飛び込んだ番組制作プロダクション(社員20人)では20代半ばでディレクター・デビュー、25歳で90分の大型ドキュメンタリーを作る。27歳で有名な賞を獲得し、鳴り物入りで放送局に入った。だが、最近は「エリートの純潔社会では俺なんかは活躍できないのかな……」と思い始めている。辞表を出すのは近いかもれない。

異質な人材を受け入れる力があるのか?

久保博子

人事コンサルタントの久保博子さん

 人事コンサルティング会社・トランストラクチャで人事コンサルタントとして活躍し、社内の人事総務部長を務める久保博子さんに取材を試みた。久保さんはまず、入社時の話し合いに問題があったと捉える。

「男性と放送局双方の入社時のすり合わせが不十分だったのではないか、と思います。どのような部署で何をするのか、そのレベルなど期待値はどのくらいか。中途採用の場合、これらを徹底して話し合い、共有することが大切。“組織の活性化”と漠然とした理由や目的で採用すると、今回のような問題が生じる場合があります

 優秀な新卒採用者が多数を占め、定着率が高い企業は人材の質が同質で、血が濃い風土になる傾向があるのです。そのために、まだ経験が浅い20代の中途採用者の活躍は上司や組織長に高いレベルのマネジメント力がないと、活躍するのは難しい場合がありえます」

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