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<漫画>女子高生が道を踏み外す時とは…。“裏社会”系ジャーナリストに聞いた

暮らし

穴を避けることより、這い上がる力が大事

こんな人生は絶対嫌だ

ギクシャクした家庭環境が主人公を追い詰めていく

――きっとどのような生き方をしていても100%の安定はないし、悪い方向にいってしまうことはあるのだと思います。

丸山:結婚して子供を育てて……みたいな世間で言われる人生を「普通」と思っている人もいるし、僕みたいに世界中をウロウロしたりしながらでもそれなりに暮らせてる人もいるし、人生は色々だと思います。いずれにせよ多くの人は「自分は正しい」と思っている道を進んでいるんですよ。誰に何を言われてもね。

 そしてそれが間違っていたら、大体地獄に落ちるまで気づかない。老婆心を発揮して「この先に穴あるから落ちるよ」とアドバイスしても大体の人は「いや、行かないとわからないじゃないですか?」と返してくる。本人が行きたがっているなら止められないから、止めなくなりましたね。だから本作では些細なことでキラキラとした表情を浮かべたまま地獄に落ちていくところを描きたいというのはありますね。

――些細なきっかけで穴に落ちてしまうというのは避けようがないのでしょうか?

丸山:第1話でもまじめな高校生がタバコを1本吸ったことがきっかけでどん底まで落ちてしまう示唆的なエピソードがあるんですけど。客観的に考えたら途中で引き返せるタイミングなんていくらでもあります。でも主観だとそうはいかないんですよね。

 だから穴を避けるのは難しい。だから穴を避けることより、這い上がる力が大事かなと思います。僕も生き地獄みたいな生活を何度も経験しています。だからこそ思うんですが、若者の特権で1度落ちてみなきゃわからないのかな。

 若ければ時間があるからやり直すこともできるし、這い上がってくる人は這い上がってくる。その時に必要なのは絶対に自分の力だし、僕も自分の力で這い上がったと思っていました。でも、今から振り返れば、這い上がる努力を続けるには周囲の支えがあったからなんですよね。地獄に堕ちている時は気がつきにくいんですけどね。

『こんな人生は絶対嫌だ』は反面教師のような作品

――丸山さんが本作の重要なテーマでもあるネガティブな感情に興味を持っている理由を教えてください。

丸山:ネガティブな感情だけに興味があるというより、人間とは多面体であるというのを常に追いかけている感じです。仕事を通して悪人や犯罪者と呼ばれる人が優しかったり、善人がめちゃくちゃ悪いことしてたりするのを見ているんですね。人間ってものすごく色々な面を持っています。

 作中にもアイドル志望の子がめちゃめちゃ一生懸命前向きにやろうとしてるけど、そのためのお金は詐欺っていうエピソードがあります。どんな人間にも前向きな部分は絶対にあって、それを浮き上がらせるのがより黒い部分であったり、逆もまた然りだと考えてますね。

 人間の本質が絶対なる善だとか、逆ステレオタイプで「善は報われないし、結局悪が勝つ」みたいなのも嫌です。世の中、単純化できることなんて、そうそうないですから。どうやっても割り切れないというのがむしろみんなツボに入るんじゃないかな? と思いながらこの原作を書いています。

――特にどのような読者に『こんな人生は絶対嫌だ』を読んでもらいたいと思いますか?

丸山:友達とコミュニケーションを取ろうとしているのにうまくできない人や仕事ができなくはないけどあと一歩のところでうまくいかない人、要するに「あいつと俺の何が違うのか?」と比べてしまいがちな人をイメージしています。そういう人が家に帰ってきて、スマホをぱっと開いてちょっと読もうぐらいの感じで見てくれればいいなと。

『こんな人生は絶対嫌だ』は自分と他人を比べてしまう人にはハマる場面がいくつもあると思います。コミュニケーションの不足が叫ばれている世の中ですから、自分がどういうふうに人を見ているかとか、ちょっとここは直したほうがいいかなと考えるきっかけになればと。あまり構えずに読める反面教師のような作品だと思っています。

<取材・文/日比生梨香子 編集/ヤナカリュウイチ(@ia_tqw)>

こんな人生は絶対嫌だ 1

こんな人生は絶対嫌だ 1

平凡な女子高生の紗希は両親が不仲で八つ当たりを受けていた。ある日、高校の不良集団に目をつけられた紗希は恐怖するが、たった1本のタバコの喫煙を受け入れたことで、なぜだか不良たちと紗希は居心地のいい関係を築いていくが、惨劇のはじまりだった。紗希の人生はどうなってしまうのか!?

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