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路上生活からの脱出をサポートする若者たち。生活保護のあり方に異議を唱える

ビジネス

地道に現場と向き合うことが1番の近道

家あってあたりまえでしょプロジェクト

 とはいえ、「声を上げる=意識高い系」という認識があるため、制度以上に声を上げられる空気を作るほうがはるかに難しい気もする。

日本には『社会運動が実際に社会を変えてきた』という経験がほぼないため、社会正義について語ったり、学んだりすることに虚しさを覚えてしまう人は、世代に関係なく多いです。『どうせ変えられない』『自助努力でなんとかするしかない』という冷笑的な態度が“意識高い系”という言葉には込められている気がします。

 ですが、実際に目の前の状況を変えようと行動し、家がない人とともに『住居を保障しろ!』と声を上げる人を嘲笑する権利は誰にもありません。そういう人たちに攻撃されたり、揶揄されたりすることを恐れずに、地道に現場と向き合って組織を広げ、社会を変えることに魅力を感じてくれる仲間を増やしていくことが、この社会の風潮を変える1番の近道です

 もちろん、簡単な話ではありません。ただ、上がる声の数が多ければ多いほど、それだけ救われる人も多くなります。少しでも関心があるなら、行政の対応に違和感を覚えたのなら、ぜひ一緒に声を上げてほしいです」

「誰もが安心して住める住居がある社会」を目指す

 最後に岩本さんは「現在も引き続き、メールや電話、LINEなどで相談を受け付けています。また、活動に加わってくれるボランティアも募集中です」と呼びかける。

「今後は、今回活動に関わってくれた若者たちで、テナントユニオン(住居組合)を結成したいと考えています。テナントユニオンとは、住居にまつわる問題をなんでも相談でき、ユニオンのメンバー同士が協力して家主や自治体に対し、安定した住宅を求めていくための組織です。これらの活動を通じ、誰もが安心して住める住居がある社会を実現していきたいです

 自己責任が根強い一方、「ツラかったら助けを求めていい」という空気感も最近は醸成されてきた。しかし、途中で心を折らせる人も多いのが現状だ。

 いつ家を失う側に回るかは、コロナ禍を通して嫌というほど痛感させられた。自分自身、または自分の大切な人が家を失っても安心できるセーフティーネットが整備されるよう、“家あってあたりまえでしょプロジェクト”の成功を祈りたい。

<取材・文/望月悠木 編集/ヤナカリュウイチ(@ia_tqw)>

フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている
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【家あってあたりまえでしょプロジェクト代表 岩本菜々】
Twitter:@IwamotoNana
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