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路上生活からの脱出をサポートする若者たち。生活保護のあり方に異議を唱える

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行政はウィークリーマンションを提供すべき

家あってあたりまえでしょプロジェクト

 また、一時宿泊施設を利用した人たちのその後について、岩本さんに聞くと「今回私たちと繋がって宿泊施設を利用した人14人のうち12人は、引き続き一時宿泊施設に滞在しながら、アパート入居に向けて生活保護制度や生活困窮者自立支援制度を利用することになりました

 なかには17年間、ネットカフェや路上で過ごす生活を続け、今回ようやくアパートに入居し、安心できる住まいを確保できた人もいました」と暗闇から脱するきっかけを掴んだ人は多いとのことだ。

 次に行政に求めることとして「『一時宿泊施設からアパート入居へ』を生活保護のスタンダードにしていく必要があると思います」と提案。

「住居を喪失している人を無料低額宿泊所に入居させることが、生活保護申請を諦めさせ、人々を路上に追いやっています。行政は無料低額宿泊所の代わりに、ウィークリーマンションやホテルなど、安心して生活できる一時宿泊施設の提供を1年中行うべきです。『生活保護を受給しながら、一時宿泊施設で心身を休めてアパートを探す』といった対応がスタンダードになれば、より多くの人の住居が保障されます。まずは、全員に安心できる住まいを提供することが、行政の役割ではないでしょうか」

声を上げれば救われる人も増えるはず

 さらには、行政の改善だけでなく、「今回の活動を通して、当事者とともに権利を求めて粘り強く交渉する人たちがいてはじめて、制度が現場で正しく運用され、より良い制度が作られることを体感しました。『家があってあたりまえの社会』は、私たちが団結して行動し続けることによって実現するのです」と自己責任論が蔓延する空気感の改善も訴える。

「『誰でも住まいを失いうる社会』は、誰にとっても生きづらい苦しい社会です。にもかかわらず、現代社会では、路上で過ごす人がいても、ほとんどの人が見て見ぬふりをします。また、自分自身が家を失った時にも、誰にも頼れずに自分を責めてしまう人も少なくありません

 家が保障される権利を求めて声を上げる人が増えれば、それを支える人の輪が広がります。そうなれば私たち全員にとって、もっと生きやすい社会になっていくはずです」

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