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チロルチョコ社長「正直、ネタがなくなりつつある」と語る。爆発的にヒットした味も

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SNSでバズった「センセーショナルな社長交代」

――大学卒業後はコンサル会社を経て、2011年に家業のチロルチョコへ入社します。

松尾:入社した後は、2年かけて工場での製造や管理、物流などチロルチョコのあらゆる生産工程を学びました。工場の拠点がある福岡と東京を行き来する日々が続きましたね。

――2017年には父親の利彦さん(現会長)から社長を引き継ぎました。日経MJに掲載した「社長交代」の広告は斬新で大きな話題になりましたよね。

松尾:ネットで話題になってましたが、実は特にバズらせる気はなかったんですよ。

――え! そうだったんですね。

チロルチョコ

日経MJに掲載された「社長交代」の広告(提供:チロルチョコ株式会社)

松尾:まず前提として「チロルチョコの社長が代替わりする」ことを業界の人に向けて伝えたかった。でも、会社案内に載せたところで誰も読まないし、紙の無駄だと思い、何かいい方法はないかと考えついたんですよ。それに、どうせ一生に一度の代替わりだから、面白くてインパクトのあるものにしたかった。そうして出来上がったのが、あのビジュアルだったんです。

――なるほど。そんな背景があったんですか。

松尾:父親はクリエイター気質で、ずっと開発や広告のコピーに携わってきたので、日経MJの広告もほとんど父親が作りました。他方、自分は感性よりも数字や定量分析、会計などのほうが得意なので、これを機に新生チロルチョコを多くの人に認知してもらいたかった。結果として、大きな反響になったのは嬉しかったですね。

コロナ禍の影響で「苦しい場面も」

チロルチョコ

スーパーやドラックストア向けに注力している大型アソート袋の商品。写真左からチロルチョコ〈ミニミルク〉

チロルチョコ

チロルチョコ〈ミニビスケットチョコレート〉

――コロナ禍ではどのような影響を受けましたか?

松尾:チロルチョコはコンビニが主力の販売チャネルゆえ売り上げが減少し、苦しい場面もありましたが、たまたま2020年に出したスーパーやドラックストア向けのアソート袋の商品のニーズが高まり、なんとか持ちこたえたんです。ただ、他社メーカーと比べると、大袋商品の“存在感”がまだまだ薄いので、認知度を上げていく必要はあると思っています。

――まだまだ先の見通せない社会情勢が続きますが、最後に今後の展望について教えてください!

松尾:昨年(2020年)にチロルチョコのミッション(使命)・ビジョン(未来像)・モットー(行動理念)を制定しました。根底にあるのは「笑顔」で、チロルチョコに関わるあらゆる人の笑顔が連鎖すれば、きっといい世の中になると思うし、少しでも貢献していきたい。

 そのためにまずは社内改革ということで、ES(社員満足度)を上げる取り組みに注力していますね。人事評価制度を定めたり、休暇を増やしたりと社員が働きやすい環境をしっかりと整えていけるようにしたいです。

――ありがとうございます! ぜひ、「bizSPA!フレッシュ」を読んでいる20代へのメッセージもお願いします。

松尾:経営者として新入社員に伝えているのは「挨拶の大切さ」。とかく勤続年数が長くなると、挨拶を適当に済ませがちになりますが、「おはようございます」としっかりと言葉に出し、気持ちよく挨拶するとメリハリもつく。心が通い合う挨拶ができるようになれば、自然と笑顔になり、社内の雰囲気や人間関係が良好になるので、リモートワークが常態化した状況下でも、気持ちの良い挨拶を意識してみるといいのではないでしょうか。

<取材・文・撮影/古田島大介>

1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている

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