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米国でアジア系ヘイト急増。“永遠の外国人”扱いは、なぜ変わらないのか

ビジネス

「永遠の外国人」扱いを受けているアジア系

 今は2021年ですけど、アジア人に対する偏見は決して最近出てきたものではありません。欧米ではもともと存在したということは、僕の経験からもわかります。アメリカはそういった状況が続きつつも、ちょっとずつアジア系の人口を増やしています。2020年の大統領選では、民主党の候補にアンドリュー・ヤンというアジア系の起業家が出ました。割と早い時期に撤退はしてしまうんですが、アジア系アメリカ人が選挙における1つの勢力になりつつある状況にもなってきていると思います。

 どんどん数が増えているアジア系アメリカ人が、アメリカでどういう扱いを受けているのかというと、1980年代に僕が受けたような偏見と差別は変わっておらず、言葉としては「forever foreigner(=永遠の外国人)」という扱いを受けています。

 で、これはもうステレオタイプで見ているという意味では、その人自身が親切であろうが何であろうが構造は変わらないんですけど、要は「ナイフとフォークは使えないんじゃないか」とか「味付けは醤油じゃなきゃいけないんじゃないか」とか、そういった思い込みで接せられてしまって、いつまで経ってもアメリカというコミュニティのメンバー、アメリカ文化の中にいる人としてなかなか認めてもらえない状況があります。

 とにかく見た目で判断されて、さらに文化的にも違うと。文化的に違う人たちだから、いずれはいなくなるだろう、仮住まいをしているという扱いを受けています。さらに、“お客様”扱いと合わせて“モデルマイノリティー”と言うステレオタイプも当てはめられます。模範的な移民、大人しく迷惑をかけない移民として黒人やヒスパニックと対比させる。これも分断の論理に使われます。

アジア系の“扱い”は根本的に変わらずにきた

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『ミナリ』では郊外の農場を開くという映画なんですけど、アジア系のアメリカ人は基本的には都市部に多くいて、個人商店などを開くなどの生活様式をする場合が多いです。ここでブラックコミュニティーやヒスパニックコミュニティーとも交差します。1989年の映画にスパイク・リー監督の『ドゥ・ザ・ライト・シング』という作品があるんですが、ここに出てくる韓国人が営む商店が「アジア系のアメリカ人がコミュニティの中でどういった存在なのか」を表しています。

 つまりは「仲間だと思われていない」という描かれ方をしています。ロサンゼルス暴動におけるコリアン商店襲撃事件、ニューヨークのフラットブッシュボイコット事件は黒人コミュニティーと、そこで商売する新興のアジア系移民の軋轢が背景にあります。問題は人種間の対立というより「アメリカ人であるか? ないか?」と言うナショナリズムにあります

 この扱いが、根本的には変わらずに現代まで来ているというのが、今アメリカで増えているアメリカ系へのヘイトクライムを生む構造的問題です。

<TEXT/ダースレイダー 構成/bizSPA!取材班 撮影/山口康仁>

1977年パリで⽣まれ、幼少期をロンドンで過ごす。東京⼤学に⼊学するも、ラップ活動に傾倒し中退。2010年6⽉に脳梗塞で倒れ合併症で左⽬を失明するも、現在は司会や執筆と様々な活動を続けている。

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