松下幸之助、ジョージ・ルーカス…なぜか成功者に共通する考え方
タレス:説得するよりも事実を見せた
哲学者タレスは、清貧の生活を好み、実践していました。ところがある日、市民の噂話を聞いてしまいます。「学問なんか何の役にも立たない。タレスを見ろ、学問ができても貧乏じゃないか」といわれていたのです。
お金儲けに興味がないだけで、儲けようと思えば造作もないタレスは、そのことを示すことにしました。タレスは、来年のオリーブが豊作だろうと判断し、「オリーブ搾り機を借りる権利を買う」という手段を考え出します。そして、オリーブ搾り機を持っている人々に、その権利を売ってほしいと交渉しました。
オリーブの収穫時期ではなかったこと、また、搾り機を持ち出すわけでなく、「借りる権利」という目に見えないものであったことから、機械の持ち主にとっては思わぬ収入になります。面喰いながらも二つ返事で権利を売ったようです。
そして翌年、実際にオリーブが豊作になったとき、タレスはオリーブ搾り機を「借りる権利」を駆使します。オリーブはタイミングを逸してしまえば腐ってしまいますから、市民は皆、タレスにお金を払って機械を借りるほかありませんでした。
実際に金持ちになれることを証明したタレスは、哲学者は金持ちになれないわけではない、なろうとしていないだけだと、あらためて、人々に認識させたのです。タレスは、説得するよりも事実を見せることに視点を変えたことで、哲学の重要性を人々に伝えることができたのです。
同じ行動でも視野を広くして考えよう
松下幸之助もルーカスもタレスも、お金儲けを最終のゴールとしていません。結果として、お金を儲けることになりますが、あくまで理想を現実にするために行ったことでした。彼らは理想の姿に対し、現状はどこにあるかを考えています。
幸之助は、水道水のように誰でも低価格で良質なものを手にできるよう、さまざまな家電の大量生産を理想としました。ルーカスは横槍が入らない理想の映画製作の在り方を求め、タレスは物事を探究することを理想としていました。
結果として同じ行動をすることになっても、視点を持つ場所とともに、視野を広くして考えることで、物事が持つ意味、役割は大きく変わってくるのです。
<TEXT/株式会社創客営業研究所代表取締役 木村尚義>