伝わらなかった「バランス栄養食」…カロリーメイト37年間の苦戦と手応え
伝わらなかった「バランス栄養食」の意味
1983年の発売以来、37年もの間、ロングセラーとして愛されてきたカロリーメイトだが、発売当初は「どのような食品なのか、浸透するまで時間がかかった」と岩﨑氏は振り返る。
発売当初はドリンクタイプとブロックタイプの2つを発売していたが、当時の食品表示の分類では、液体タイプは「清涼飲料」、ブロックタイプは「菓子」にしか当てはまるカテゴリーがなかった。「バランス栄養食」という製品コンセプトが伝わらないため、新たなカテゴリーを作るために奮闘したという。
「6か月ほど保健所と話し合いを重ね、『栄養調整食品』という新たなカテゴリーをカロリーメイトのために作ることができた。少なくとも、これで他の食品群とは違う商品だと伝えやすくなりました。
当時は、健康のための『バランス栄養食』として世に出しても、不思議がられてしまったんですね(笑)。発売当時は飲料であれば甘いジュース、固形の加工食品であれば甘いお菓子が中心でしたが、カロリーメイトは嗜好品でもなく、価格も決して安いわけではない。最初から順風満帆とはいきませんでした」
スポーツ栄養やダイエットで認知拡大に成功
土壌を少しずつ固めつつ、突破口となったのは「スポーツ栄養」だった。1980年代はまだ、スポーツと栄養の関係性についての研究データは少なく、試合前日には「明日は勝つためにカツ丼を食べる」といったげん担ぎや精神論が多い時代だった。そこに、「栄養に対する課題があると考えました」と岩﨑氏は話す。
「エビデンスに基づいた“バランス栄養”の重要性を、スポーツシーンで活躍するアスリートに伝えていきました。プロスポーツ選手や学生の運動部など幅広く伝える活動を行う中で、アスリートだけでなく、ドクターや指導者にもバランス栄養の重要性が浸透していったんです」
さらに1990年代のダイエットブームが到来すると、栄養バランスがよく、かつカロリー計算がしやすい、カロリーメイトの注目度が一気に高まりを見せる。
「この頃流行していたダイエット法は、とにかく食べずに“我慢”するダイエットが一般的でした。ただ、これだと減量することはできても、栄養不足で不健康な状態になってしまう。そこで、カロリー計算がしやすく、1本でも、一口でもバランスよく栄養がとれるカロリーメイトが一般消費者にも認知されるようになりました」