伝わらなかった「バランス栄養食」…カロリーメイト37年間の苦戦と手応え
仕事や家事に追われていると、つい食生活が偏ってしまう。そんな時、ビタミンやミネラルなど、不足しがちな栄養成分を手軽に補給できるのが栄養補助食品。数ある栄養補助食品の中でも、ロングセラー商品として知られているのが「カロリーメイト」だ。
大塚製薬ニュートラシューティカルズ事業部 製品部 カロリーメイト プロダクトマーケティングマネージャーの岩﨑央弥氏に、 カロリーメイトの開発背景や栄養補助食品市場を牽引してきた理由について聞いた。
医療現場から生まれたカロリーメイト
大塚製薬は、疾病の治癒を目指し新しい治療薬を提供する「医療関連事業」と、健康の維持・増進のための製品を提供する「ニュートラシューティカルズ関連事業」の両輪で事業展開を行なっている。
岩﨑氏は「科学的な知見や根拠をもとにした商品を世に出すことができる」と説明する。
「ポカリスエットは点滴からヒントを得て誕生した商品ということは比較的広く知られていますが、実はカロリーメイトも同じ医療の現場にルーツがある製品なんです。もともとは、通常の食事がとれない患者さんが経口(口から栄養を摂取すること)で身体に必要な栄養を摂るための濃厚流動食(ハイネックス-R)を開発し、入院患者さんの栄養補助として提供していました。
一方で当時は、食の欧米化やインスタント食品の普及により食生活が乱れるという社会問題が顕在化しはじめていました。そこで、医療用の濃厚流動食を応用し、一般の方の栄養補助に役立てようと開発したのがカロリーメイトだったんです」
カロリー計算が簡単にできる設計に
医療用の製品を一般消費者向けにも販売する上で、こだわっているのは「独自のフィロソフィー」に基づいた製品設計にあるという。
「味にこだわるのはもちろん、科学的エビデンスに基づいた開発を行い、確かな根拠を持った製品を世に出せることは製薬会社だからこその強みだと思います。カロリーメイトは、これ1つで身体に必要な5大栄養素がバランスよく摂れるということが最大の特長です。
ブロックタイプは1本100kcal、リキッドタイプは1本200kcalとカロリー計算が簡単にできる設計になっていますが、これは医療現場で、どのくらい患者さんが栄養を摂ったかを管理しやすいような製品設計にしていたことがルーツになっています」