新人の余興はパワハラか?元フジ・菊間千乃弁護士に聞く
スマホの充電が電気泥棒に?
外出先で急なトラブルが起きて、すぐに連絡をしなければならない……。事態は一刻を争うのに、携帯電話が充電切れ、なんてことありますよね。そんなときに駅のホームやカフェでコンセントを見つけたら、使ってしまいたくなる気持ちはわかります。でも、これもれっきとした犯罪なのです。
刑法245条は「電気は財物とみなす」と規定していますから、他人の電気を勝手に盗む(充電する)行為は、窃盗罪に該当します。
実際、コンビニエンスストアで店に断りなく携帯電話を充電していた中学生が窃盗容疑で書類送検された、駅構内で携帯電話を充電していた女子大学生が微罪処分された、コインランドリーでパソコンの充電をしていた男性が逮捕されたなど、電気窃盗に関する事例はたくさんあります。
いまはコンビニでもモバイルバッテリーが購入できますから、緊急だったという言い訳も通用しません。どうしてもというときは、施設管理者の方にことわりを入れてから、電源を使用させてもらいましょう。
大切なのは思考をめぐらせること
今回ご紹介した事例は、「ついやってしまいがちなこと」のほんの一部です。日常生活にいかに法律がかかわっているかということに気づいて、日々の行動が変わったり、ニュースを見るときに、少し法律の視点を持っていただければうれしいですし、もっと知りたいと思って、深く学んでいただければ、なおうれしいです。
しかしその一方で、私は、なんでもかんでも法律で規制しようという考え方には賛同できません。過度な規制は自分の頭で考えることを放棄することにつながりますし、法律がなければ何をしてもOKという風潮をかえって助長しているのではないかと思うところもあるからです。
私が尊敬する作家の故・外山滋比古さんは、知識は過去、思考こそが新しいものを作る力であり、自分で考える力が大切だと常々おっしゃっていました。特にこのコロナ禍においては、自分の頭で考え、行動することが大切だなと思うことがたくさんありました。
得た知識をそのままにとどめずに、なぜこんな規制があるのだろう、この規制があるということは、こういう場合はどうなんだろう……と思考をめぐらせていただければ、幸いです。
<TEXT/弁護士 菊間千乃(きくまゆきの)>