新人の余興はパワハラか?元フジ・菊間千乃弁護士に聞く
「新人で余興」はパワハラかも
私が社会人になったころは、新人芸は恒例という会社がたくさんありました。でも今は、内容いかんによってはパワハラになってしまいます。
ある会社の例をお話しましょう。その会社は、営業目的を達成できなかった社員に対し、研修会で発表する際、その会を盛り上げる目的で特定のコスチュームを着用させました。
後日、これが訴訟にまで発展し、裁判所は、社会通念上正当な職務行為とはいえないとして、会社に対し22万円の賠償を命じたのです。
ここで注目したいのは、「当該社員がコスチュームの着用を明示的に拒否していなかった」ということです。拒否をしなかったのは、受け入れていたからではなく、拒否できる状況ではなかったからです。そして、裁判所は、部下という立場からすれば、上司の命令を「拒否することは非常に困難であった」と評価したのです。
損害賠償責任を負うことも
「本人たちは楽しそうだったのに」という言い訳は通用しません。命じる方は軽い気持ちでも、命じられたほうは、場の雰囲気を壊してはいけないと、無理に笑って余興をしているかもしれません。
一般的にパワハラは、① 優越的な関係を背景とし、② 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、③ 労働者の就業環境が害されるもの、が該当すると考えられています。イラストのようにミニスカートといったコスチュームなどを着用させた場合には、パワハラに加えてセクハラと認定される可能性もあります。
仮に認定されれば、会社はもちろん、命令をした上司自身が、損害賠償責任を負うこともあるでしょう。自分が新人の頃は……という言い訳は通用しませんから、お気を付けください。また、命じられる側の皆さんは、命令が業務とは関係のないもので理不尽だと思えば、別の上司に相談するなどして、声をあげてくださいね。