菅内閣で「働き方」はどう変わるか。正社員の特権は減っていく
非正規社員問題の根源は
それはなぜか。派遣社員は、最も多かった時期でも145万人程度で、全労働者の2.8%に過ぎないからです。派遣の存在は、非正規が増えた現状に、そこまで大きく関連していないのです。
この問題の根源は、高度経済成長期に形成された「終身雇用」「定期昇給」という正社員制度にあります。これらは人口が増え、消費が爆発的に増え、経済が伸びていく段階においては、非常にマッチした雇用の在り方でしたが、高度経済成長が終わった時点で見直すべきだったのです。
終身雇用では、社員の配置転換を基本原則とするものの、経営者側が一方的に解雇することはできません。また、定期昇給のもと、社員の給与は毎年上がっていきます。しかし、長引く不況で多くの企業は利益も横ばい、もしくは減少傾向に……。そもそも無理があるのです。
「非正規という言葉をなくす」発言の真意
とはいえ、これまではダマしダマしやってきました。しかし、1990年代にバブルが、さらに2000年代にITバブルも弾けました。ますます厳しい経営状況に、企業は正社員のみ「終身雇用」「定期昇給」の特権を残し、非正規雇用の比率を高めて回していったのです。
結果、全労働者の4割近くが非正規となるという現象が起こります。企業側も分かっているはずですし、国ももちろん分かっています。とはいえ、「終身雇用をやめましょう」「定期昇給を辞めましょう」なんて誰も言えないですよね?
しかし、安倍前総理の「働き方改革」を行った結果、今では「終身雇用は難しい」「定期昇給もやめる」なんて意見を普通に主張できる状況になったのです。
一見すれば労働者に厳しいことを言っているように聞こえるかもしれませんが、正社員だけが“正しい働き方”をするのを禁止する方向に舵を切り、会社も、労働組合も「定期昇給」「終身雇用」を全労働者に与えるのは難しいという同意を得たわけなのです。
安倍前総理は繰り返し「非正規という言葉をなくす」と言い続けましたが、それは裏返せば「正社員も非正規も垣根をなくす」ということで、事実そんな流れになってきたわけです。