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三浦春馬さん自殺報道にも問題が…日本の若者が追い込まれる背景

暮らし

紙に自分の気持ちを書き殴ってみる

――先生のおすすめの方法はありますか?

原田:私が患者さんによく「手っ取り早くて効果がある」こととしてお伝えしているのは、紙に自分の気持ちなどを書きなぐりでもいいから書くことです。これはエビデンスもある方法です。落ち込んだことがあったら、そのことについてなんでもいいから書きなぐる。

 たとえば1行日記などはわりと簡単に出来るのでお勧めできる方法かと思います。とはいえ、これらは全員に効くという万能薬ではありません。

 理想としてはいくつかの自分に合ったコーピングのレパートリーを持っていて、その中でパッとできそうなものを使うということです。落ち込んだら歌を歌う、あるいはその辺をアルコールに逃げる、あるいはギャンブル、睡眠薬などというのもストレスへの対処という意味ではコーピングと言えます。

 しかし、これらは望ましい方法とは言えません。コーピングにはネガティブなものがあるということも併せてわかっていただきたい部分です。そうではなくて、何かポジティブになれるものをいつでも使えるようにポケットに忍ばせておく、これが大切だと思います。

メンタルヘルスは公衆衛生の問題

医師 診察

――最後に20~30代が、特に知っておくべきこと、教えてください。

原田:メンタルヘルスは本人の心が弱いなど、道徳的な問題としてとらえられることがあります。でも本来は新型コロナウイルスへの対応と同じように、公衆衛生の問題です。ちゃんと科学的に予防できる方法があるのだということを知ってほしいと思います。

 常日頃から心の健康管理をして、ストレスと上手に付き合って、コントロールをしていくこと、要するにこれは心の一次予防のようなことだとも言えます。これは新型コロナウイルスで周知された三密の回避や手洗いのように、すべての人が予防手段としてやるべきものなのです。

 コーピングを含めて心の一次予防のようなものがもっと広く習慣化していくことが今後より大切になってくるのではないかと思います。

<取材・文/bizSPA!取材班>

筑波大学教授。1964年生まれ。一橋大学社会学部卒業。同大学院社会学研究科博士前期課程、カリフォルニア州立大学心理学研究科修士課程修了。東京大学大学院医学系研究科でPhD取得。法務省、国連薬物犯罪事務所(ウィーン本部)、目白大学人間学部教授等を経て、現職。専門は、臨床心理学、犯罪心理学。著書に『リラプス・プリベンション―依存症の新しい治療』(日本評論社)など

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