三浦春馬さん自殺報道にも問題が…日本の若者が追い込まれる背景
自殺報道が与える悪影響
――報道の影響についてはどうお考えでしょうか?
原田:最近の傾向として、今回の三浦春馬さんの自殺報道もそうですが、自殺に関する情報へのアクセスが簡単になっており、ネットなど様々な媒体で自殺の具体的な方法などについて気軽に調べられてしまうのもひとつの問題です。
また、自殺報道に関しては世界保健機関(WHO)は『自殺予防 メディア関係者のための手引き』を出しており、その中には詳細な自殺の手段や方法は報道するなと書かれているのですが、多くのメディアがそれを破っています。
しかも若い人たちはネット世代ですから、その情報に簡単にアクセスできます。これもまた若年層の自殺リスクを高めることにつながっているのではないかと思います。
徴候よりも個々人の付き合い方
――では実際、周囲の人あるいはご本人が注意するべき徴候などはあるのでしょうか?
原田:自治体や国、医療機関が作成した各種ガイドラインにもあると思いますが、ふさぎ込む、抑うつ的になるというのはひとつあるでしょう。人との接触を前にもまして避ける、自分でこもってふさぎ込んでいるような状況が見える、孤立してしまっている。こういう状況はわりと周囲の方も目に見えてわかりやすいかと思います。
あとは大きなライフイベントがあったかどうか。例えば失敗をした、失恋をした、中傷されたことなどが影響している場合があります。それから最近でいえばSNSの動向、たとえば書き込みが少なくなった、過去の内容を消したといったことも、ひとつの徴候と考えらえるかもしれません。
もちろん、あとから「あれが徴候だった」と、わかることもあるでしょう。けれども、いくつか徴候が見えたとき、それとなく、気を遣ってみる。また自分から信号を出すとは限らないので、特に過去にリスクがあった人は注意する必要があると思います。
――なぜ、あの人が、といわれることもあります。気づかれにくい要因、見逃されがちなサインというのはあるのでしょうか。
原田:特定の徴候というよりは現代の若者の付き合い方の問題かと思います。個人の心理的な領域にはあまり踏み込まないようにお互いがふるまっている。何か表面的なところがあるのではないでしょうか。
また、ある時代までは青年は悩むものだ、という青年像があったように思いますが、今は明るくて元気というところが、理想の若者像になっているように思えます。
ですから、お互いに望ましい自分しか見せず、弱いところをさらけ出さなくなってしまっている。だから徴候に気が付かない、周りに見せないところがあるのかもしれません。