スターバックス元CEOが語る仕事論「お茶くみも面白い仕事になる」
2019年にスタートした「働き方改革」。政府の重要政策のひとつとして推進され、1年が経とうとしているが、働き方は本当に変わったのか。むしろ、個々の取り組みが問われる分、「なぜ働くのか」「何のために働くのか」という悩みが深まっているようにも見える。
「ワークライフバランスや有休取得やノー残業などの働き方よりも、もっと大切なことは、何のために働くのかといった自分のミッションをしっかり意識することが大切です。働き方よりも働く意義が大切なのです!」
こう断言するのは、著書『MISSION-ミッション』(アスコム)が話題のスターバックス・ジャパン元CEO・岩田松雄氏だ。岩田氏によれば、ミッション(使命)はビジネスや経営だけではなく、個人にとっても必要不可欠なものだという。
では、どうすれば、「ミッションに根ざした働き方」を実現できるのだろうか。インタビュー前編に引き続き、20代ビジネスマンが自分にとってのミッションを発見し、実現する秘訣について岩田氏に語ってもらった。
なんのために働くのか?
――「働き方改革」が叫ばれても、「自分がなぜ働くのか、何のために働くのか」という悩みが一向に減らないのはなぜなのでしょうか。
岩田松雄(以下、岩田):結論から言うと、自分の存在理由「ミッション」がないためです。ミッションは企業にだけ必要なものではありません。ミッションを持っている企業に活力があり、顧客を楽しませ、感動させます。ミッションとはその企業の存在理由のことです。
個人の場合のミッションの定義は、「自分がこの世に生かされている理由」、つまり自分自身の存在理由です。ミッションとは日本語で「使命」と訳されています。つまり自分の命をどう使うのか?
企業と同じように、ミッションを持っている人は、厳しい現実に直面しても、常に前向きでいきいきしています。ミッションとはいわば、「自分はなぜ働くのか?」「自分はどう生きるのか?」という基本的な問いかけなのです。
職場で「ミッション」を見つける
岩田:ほとんどの企業は経営理念やミッションが掲げられています。多くの場合ミッションがあるにはあるけれど、誰もその存在を知らず、形骸化している企業が結構あります。
講演会などで、よく聞かれることのひとつに「ミッションの社内浸透方法」があります。答えは簡単で、企業のトップ自身が真剣にミッションに取り組み、社内外にメッセージを発信し続けることです。それときちんとミッションの体現度を評価につなげることです。つまり誰を偉くするのか? です。数字だけの評価だけではなく、会社の理念や行動指針をしっかり体現した人が評価されるようにすべきです。
――どうも、うちの会社はミッションが形骸化して売り上げや利益ばかり追求していると思ったとき、とれる選択肢はやはり、転職なのでしょうか。
岩田:そもそも、就職活動の時点できちんと見ておかなくいけないと言えますね。その後、転職するかしないかはまさに自分次第。最終的には自己判断するしかありませんが、もし、現時点でモヤモヤを抱えているなら、まずは転職活動することは賛成です。
人と人との関係と同じで、会社と自分との「相性」の問題があります。自分の価値観やミッションと、勤め先のそれらが合うかどうか。その確認が不十分だと、勇気を振り絞って転職したのに、結局は同じような不満を抱き、また転職するといった事態を招きかねません。