東大合格者数No.1、開成高校の「非合理的な伝統」の本質
人間性・人格を形成するという「大目的」
要は、開成における合理性は、ただ「物事を効率的にこなす」という考え方ではなく、れっきとした「目的」が存在しているということです。開成の教育理念のひとつに「人間性を開拓、啓発し、人としての務めを成す(開物成務)」というものがあります。
『開成流ロジカル勉強法』でも登場した「ペンは剣よりも強し」という言葉も有名ですが、それよりも手前に来る理念です。
いわば、人間性・人格を形成するという大目的があるからこそ、勉強においては極端に効率的な制度を用いるけれども、運動会などの生徒自らが運営するイベントでは(必ずしも効率的とは言えない)伝統の取捨選択を含め、生徒に委ねられているのでしょう。
ロジックだけでは人を動かせない
開成において私が学んだことは「合理性に先立つ目的」であると述べました。このように書くとなにやら難しい話が始まってしまいそうですが、『開成流ロジカル勉強術』でテーマとするのはあくまで「勉強」です。やはり勉強に取り組む以上、なるべく無駄なくこなしたいという気持ちは(実際に成功するか否かはさておき)とても理解できるものです。
だからこそ、『開成流ロジカル勉強術』では4技能(読む・聞く・書く・話す)やロジックといったテーマに取り組み、将来にわたって活用できる力を身に付けていただこうと考えています。
しかし忘れてはならないことがひとつあります。それは「ロジックだけで人を動かすことはできない」ということです。勉強する際、もしくは情報を正確に伝達する際、「4技能を駆使してロジカルに情報を処理する」ことは非常に効率的ですし、そのプロセスの中に正確性を担保する要素が盛り込まれていることを、みなさんも理解いただいていると思います。
しかし他人に対して実際の行動を要求・依頼したり、お願い事を聞いてもらったりするためには、正確な情報を伝えるとか、効果的に情報を伝えるだけでは不十分です。