上司や顧客の要望に「完璧な回答」をしようとする人がハマる罠
プレゼンで陥りがちな「確証バイアス」とは
問題解決策を考えると、自分の都合のよい話を積み上げていくことで「うまくいく気がする」と考えてしまいがちです。
顧客へのプレゼンでも同じように、都合のよい「たられば」で説得しようと試みてしまうことがありますが、このような案は、実行に移したときに脆くも崩れ去ることが多々あります。「よい案を作ろう」「よい結果を出そう」と考えれば考えるほど陥りがちで、これは「確証バイアス」と呼ばれています。
現実的に成功率が低いことだけでなく、自分だけが「成功間違いなし」と思い込んでいることが多いので、説明されている相手があなたに対して強い疑念・不信感を抱いてしまうことが問題です。
自分にとって都合のよいグッドストーリーの裏には、必ず都合の悪いバッドストーリーがあるものです。
「この案はこういう流れになればうまくいきます」というグッドストーリーとともに「この案はこういう場合にはうまくいかないでしょう」というバッドストーリーをバランスよく提案するようにしましょう。
その上で「うまくいかなかった場合はこういう手を打つつもりです」という案まで提供できれば、「信用」を築くことができるのです。
周りを巻き込むバッドストーリーの立案
「絶対うまくいきます」という都合のよい話は声が大きくなり、「こうなったらやばいな」というバッドストーリーは密かに抱え込んでしまう人が多いのですが、実際にはバッドストーリーこそ上司・顧客を巻き込んで合意をしておくことが大事です。
それは、信用問題はもちろん、行き詰まったときの突破力が変わってくるからです。
上司と皆さんの大きな違いは経験です。もっと詳しく言うと「失敗の量」が違います。ですから、あなたの案がグッドストーリーではなく、バッドストーリーになって行き詰まったときに、「どのように対処したらよいか」を考える引き出しの数が違うのです。
私も経営者ですし、コンサルタントとして多くの経営者やリーダー層と接してきましたが、若手の皆さんが思っている以上に「部下が失敗したときに積極的に活躍したい」と考えているものです。ですから、自分の案のバッドストーリーについてはぜひ躊躇せずに相談し、アドバイスをもらってみましょう。
そうすると、あなたの案が実行に移されたときにどのように推移するかを必ず気にしてくれますし、行き詰まったときには、あなたを責めるのではなく力になってくれるのです。
顧客に対しても同様です。案が行き詰まったときには、顧客にも方向転換をして動いてもらわなくてはいけません。責任のなすりつけあいをしている時間はもったいないものです。
バッドストーリーに陥る可能性は、ゼロにはできません。上司・顧客と共有することでしっかりと巻き込んでおくことは、短期的にも長期的にもあなたの信用アップとよいアウトプットを後押ししてくれることでしょう。
<TEXT/苅野進>