上司や顧客の要望に「完璧な回答」をしようとする人がハマる罠
誰でも、仕事はうまくこなしたい、評価されたいという気持ちは同じです。
ただ、企業側には手厚い社員教育体制を調える余裕がなかなかなく、「見て覚えろ」「自分で学べ」という環境の中で萎縮してしまい、成果も出せず、うまくいかない……という負のスパイラルに陥ってしまう人が多いのではないでしょうか?
そこで今回は、新刊『仕事の不安・悩みがなくなるロジカルシンキング』(あさ出版)著者である苅野進氏に、「信用と結果を生む提案をするコツ」について解説してもらいます(以下、苅野氏の寄稿)。
「信用」を失うのはどんな時か
なんだかうまくいかなそうだから怖い。それは、うまくいかなかったときに失うものがあると考えているからです。信用、資金、自信が主な3つでしょう。
今回はそのひとつである「信用」について考えてみます。あなたが証券会社の営業マンだったとします。あなたが顧客に勧めた株式が値下がりしたときの「信用」を考えてみましょう。
大きな勘違いは、「株式が下落した」ことで信用を失うことはないということです。株式が予想に反して上昇したり、下落するなど誰もが理解していることだからです。
信用を失うのは、「必ず上昇する」と宣言をしたにも関わらず「下落した」ときです。このごく当たり前の事実を大小多くの場面で理解できていないと、ビジネスの場面では大きく損をすることになります。
信頼関係を築くのに「満点の回答」は必要ない
株の上昇や下落は営業マンにコントロールできません。同様に、未来についての出来事の多くはコントロールできません。顧客は、そのようなものに対してコントロールしてほしいなどと要求はしていないのです。
求めているのは「正しいリスク情報」、言葉を変えれば「期待値」です。これはコントロール可能であることを理解しなくてはいけません。
「絶対に大丈夫なのか?」
この顧客からの問いかけは、「絶対に大丈夫だ」という答えを求めているものではなく、「あなたの絶対はなんとなく不安だ」という疑念を伝えているのです。
このような勘違いは日常でもあなたを苦しめます。上司や顧客からの要望に対して、満額回答が要求されていると考えて、「完璧な案をつくらなくてはならない」「必ず成功する案でなければ実行できない」と、いつまでも到達できないゴールを目指して足踏みしてしまったり、できもしない約束をして期待値を上げてしまったりするのです。
ビジネスにおける「信用」とは「リスク」を正しく共有することです。ですから「いかにリスクをなくすか」ではなく「リスクを正しく分析し、相手と共有する」ことを目指すことが「信用」の確保につながるのです。