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「SNSは人を孤独にする」男たちの“居場所”をユーモラスに描いた監督に聞く

暮らし

SNSは人を孤独にする

シンクオブ

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――『ナルコ』(2004)では共同監督を務めていらっしゃいますが、今回、初めて単独で監督を務めた理由は?

ルルーシュ:これまで俳優として、短編映画やミュージックビデオから長編映画まで様々な作品に出演したのですが、他人が作った作品のなかでは自分が本当に伝えたいことが表現できないと常々思っていました。今回の映画はとにかく自分がやりたいことを追求したつもりです。

 現代はとても便利な社会になっていますが、皆どこかに喪失感や哀しみを抱えてて、孤独に陥っている。でも、それを誰かと共有することで幸せになれるんじゃないか? そういったことを映画をとおして伝えたかったんです。

――現代人の喪失感や哀しみは、どこから来ると思いますか?

ルルーシュ:これは今、世界中で起こっている現象だと思うのですが、持つ者と持たざる者の間に亀裂が起こっています。そして、生活が便利になればなるほど、なぜか満たされない……。例えば、カフェに行っても今では皆がPCやスマホをイジっています。昔はカフェと言えばはおしゃべりの場でしたが、今や自分だけの世界に引きこもってしまう。なにか問題があっても自分で壁を作ってしまい、SNSにアップはしても、だれかと直接コミュニケーションをすることはなくなってしまいました。

――SNS上では本物のコミュニケーションはとれないということですか?

ルルーシュ:インスタにキレイでパーフェクトな写真をアップする日々を送っていると、自分の理想とする人生と現実とのギャップに苦しみ、鬱っぽくなってしまう人が多いと思うんですよね。フランスに限って言えば失業率も高くて不況の世の中です。そんななか、人がすがれるものがSNS以外になくなってきたことに、脅威を感じています。だれかと直接話し、だれかを思いやったほうが、人生に希望を見出せるんじゃないでしょうか。

落ち込むのが当たり前の人生

シンクオブ

ジル・ルルーシュ監督

―本作がユニークな点は、登場人物が生きる暗い現実をとおして現代社会へ問題提起している傍ら、物語全体が明るくコミカル、かつ感動作に仕上がっているところだと思います。

ルルーシュ:個人的にはメッセージ性のないコメディも、ユーモアのないドラマも好きじゃないんですよね。私たちの一日はワルツのように色いろな感情から成り立っています。喜びで始まった朝が、憂鬱な夜で終わるかもしれない。

 喜んだり、哀しんだり、ナーバスになったり、寂しくなったり、さまざまなエモーションを感じるのがごく普通の一日。仮に落ち込む日があっても、決して悲観的になる必要はないんです。インスタのような完璧な人生なんてあり得ないのだから。

 映画の冒頭では登場人物が抱える問題を描き、後半では皆が団結し助け合うことで希望を見出していく様子を意図的に描きました。私たちが抱える悩みや問題は、誰かの助けを借りて一緒に向き合うことで必ず幸せになれる。このことを観客の皆さんに感じてもらえれば嬉しいです。

<TEXT/此花さくや>

映画ライター。NYのファッション工科大学(FIT)を卒業後、シャネルや資生堂アメリカのマーケティング部勤務を経てライターに。ジェンダーやファッションから映画を読み解くのが好き。手がけた取材にジャスティン・ビーバー、ライアン・ゴズリング、ヒュー・ジャックマン、デイミアン・チャゼル監督、ギレルモ・デル・トロ監督、ガス・ヴァン・サント監督など多数Twitter:@sakuya_kono、Instagram:@wakakonohana

【公開情報】
シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』は新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開中

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