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サンドウィッチマン、好感度ナンバーワン芸人を生んだ2つの戦略

コラム

サンドウィッチマンが到達していた“境地”

 彼らが敗者復活戦と決勝の1本目に披露したのは「街頭アンケート」のネタでした。軽いあいさつの後、以下のようなセリフが交わされます。

伊達「まあ、いろいろ興奮することっていっぱいあるけど、いちばん興奮するのは急いでるときにされる街頭アンケートね」
富澤「ああ、これ、間違いないね」

 ここで彼らは首を下に傾けて、コントを演じるモードに入ります。余分な前置きをせずに、コンマ1秒でも早くコントの中身に入る。このスピード感こそがM-1では必須なのです。M-1で優勝する漫才は、F1カーの車体のように、無駄な部分が1つもないほど研ぎ澄まされたものでなければならない。サンドウィッチマンの漫才はその水準に達していました。

 彼らはこの漫才で決勝ファーストステージの暫定1位に輝き、最終決戦に進みました。最終決戦に挑んだのは、サンドウィッチマン、キングコング、トータルテンボスの3組。

大一番に潜む“魔物”

マイク

(C) Oleg Dudko – Dreamstime.com

 サンドウィッチマンが2本目に選んだのは「ピザのデリバリー」。どこでやっても必ずウケる彼らの自信作でした。

 ところが、ネタの途中でちょっとしたトラブルが起こりました。伊達みきおさんがネタをとばしてしまい、一瞬言葉に詰まったのです。富澤さんはいち早く相方の異変に気付いたのですが、緊張のあまり自分も言葉が出なくなってしまい、相方をフォローすることができませんでした。

 その直後、伊達は何とか次のセリフを思い出し、ネタを再開しました。2人は落ち着きを取り戻し、そのまま漫才を終えることができました。このネタは今まで100回以上もやっていて、ネタを飛ばしたことは一度もなかったそうです。

「甲子園には魔物が棲んでいる」と言われることがありますが、極度のプレッシャーがかかるM-1の決勝の舞台にも間違いなく魔物は存在しています。勝負の行方を左右する気まぐれな魔物は、サンドウィッチマンを簡単には勝たせてくれませんでした。最後まであきらめない心がギリギリのところで彼らを救ったのかもしれません。

 最終審査の結果はサンドウィッチマン4票、トータルテンボス2票、キングコング1票。サンドウィッチマンの優勝が決まりました。

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