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2020年、37万人が不足の衝撃。IT業界に人が集まらない深刻な事情

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海外人材の活用はなぜ進まない? 2つの理由

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 予想される大幅な人材不足に対して、海外の高度専門人材をどう受け入れるかの議論が活発ですが、国内IT業界には海外人材を受け入れる度量が欠けているのも事実です。

 理由の1つ目は待遇です。昨年、中国の通信機器メーカーであるファーウェイが初任給月額40万円という求人を出して話題になりましたが、米国の求人情報サービスGlassdoorを見ると、円換算で年収1000万円を超えるエンジニアの求人は決して珍しくありません。アジア圏においても国内報酬を超える求人も急速に増えてきています。

 そして2つ目が国内企業が海外人材を受け容れる際の大きな課題には「言葉の壁」もあります。受け入れ側の日本企業が英語でのコミュニケーションを得意としなければ、海外人材は日本語をわざわざ学ばないといけません。しかし、先に述べたように日本企業の待遇がグローバルに比べて落ち込んでいる以上、わざわざ日本語を学ばなければならないのは大きなストレスになります。

 IT業界に限らずですが、経済産業省の発表によると、外国人留学生の8割もの人材が、卒業後日本企業で働く意思を持っていないとのことです。日本は、働く場としての魅力も国際競争力を失いつつあるのです

景気が良いIT業界の将来は暗いのか?

 いろいろとIT業界の負の側面を説明してきましたが、今はまだ悲観するときではありません。

 現時点では多くの業界と同様に非常に「景気が良い」時期であると言えます。しかしながら、この状況が未来永劫続くものではないことも、多くの人が薄々感じていることだと思います。今こそ、IT業界の構造悪を変えることができる最後のチャンスと言えるかもしれません。

 そこで、多くのIT企業が取り組むべきたったひとつのこと、それは「マーケティング」だと断言します。マーケティングといって思い浮かべるのはPRや広報のことだと思いますが、それは大きな間違いです。

 あの「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」を運営する株式会社ユー・エス・ジェイの社長に就任して業績をV字回復させた森岡毅さんはマーケティングを「価値を創造する仕事」と言っています。

 IT業界の企業や人材にとって、価値の創造とは一体なんでしょうか。一言でいえば顧客の事業ニーズを満たすためのスキルに尽きるのですが、それは技術が唯一無二の源泉であることに間違いはありません。

 IT業界で事業を営む経営者の方とお話する機会があると、「御社の強みは?」とお聞きするのですが、「経験」とお答えする方が実に多いです。しかし、構造悪の問題で、上流の企業の都合によって技術的経験値が連続して積み上げられる保証はどこにもありません。

 IT企業は戦略的に自らの強みを設定し、それを引き伸ばし、それによって得た経験を自社の価値として明確に打ち出さなければなりません。

<TEXT/小井戸浩>

ウィルソア株式会社代表取締役。システム開発会社、独立系ソフトウェア企業を経て独立。多重下請け構造など、IT業界の課題解決のためにテクノロジー業界向けPRプラットフォーム「techstory.」を立ち上げる

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