成城石井が”新鮮で安価な生まぐろ”を通年販売 難題を実現した舞台裏

海温上昇に伴う不漁が続き、魚の価格が高騰する現在の日本。加えて、世界情勢の緊張によって記録的な物価高が起きているシビアな状況である中、明るいニュースがある。スーパーマーケット『成城石井』が、今春から、沖縄県産天然“生”まぐろを極力安価かつ通年で本格販売すると発表した。
現在、一般的なスーパーの鮮魚売り場で通年並んでいるまぐろは、安定供給が可能な養殖ものか、遠洋漁船が船上で超低温冷凍(-60℃前後)して持ち帰った冷凍天然ものがほとんど。天然の“生”は漁期や漁場が季節で変わるうえ鮮度劣化が早く、特定の時期に特定の産地からスポット的に入荷する商材というのが業界の常識であり、今回の天然生まぐろの通年販売に関してはほぼ前例がないという。
ではなぜ、その無理難題を成城石井が実現させることができたのか? その取り組みと商品化について担当バイヤーに尋ねた。
目次
希少な生まぐろの安価販売を叶えた2つの企業
今回の生まぐろの販売の実現には、2つの企業の存在がある。

その1社が、沖縄県の坂下水産だ。沖縄近海は、温暖な海水と黒潮が育む豊かな漁場に恵まれ、生まぐろの水揚げ量は全国3位。この恵まれた資源背景を誇る同県において、優れた目利きや加工技術を持つ仲卸として厚い信頼を集める生まぐろの仲卸・加工業者である。

新鮮でおいしい生まぐろを見極めるのはもちろん、首都圏の成城石井の売り場に並ぶ時間を逆算してカット・パック包装を行い、輸送の時間を経ても鮮度を保つ工夫がされている。まぐろに精通した坂下水産の知見と技術の賜物だ。
2つ目のキーとなる企業は、国内随一の航空輸送網を構築するJALグループだ。同社が保有する氷を使わない保冷機能付きコンテナを用いることで、輸送重量を大幅に削減。物流コストを抑えつつ沖縄から首都圏までスピーディーに生まぐろを運ぶことができる。
成城石井が天然“生”まぐろを極力安価かつ通年販売を実現させたのには、こうした背景がある。
成城石井が生まぐろを選択した理由
水産品の価格が高騰しているとはいえ、海に囲まれた日本であれば、安価かつ鮮度を保持したまま供給しやすい魚種は多いはずだ。なぜ、前例が少なくハードルの高いまぐろを成城石井が選択したのか。本プロジェクトのブレーンである 成城石井の 商品本部商品部鮮魚課チーフ 中村瞬さんと、同社 事業推進本部新規事業室次長 水野翔太さんに尋ねてみた。

「まぐろを選択した大きな理由としては、お客様のニーズですね。当社の販売実績からまぐろは人気が高く需要も大きい。その上で、お客様によりおいしい生まぐろを安価で楽しんでもらいたいという思いで本施策はスタートしました。
関東近海でも生のまぐろは獲れますが、季節によって漁獲量のばらつきが出てしまい、価格がどうしても変動してしまう。一方、沖縄は比較的に水温や海流が安定しているため、必要な漁獲量を確保することができます」(中村さん)

「生まぐろを流通させる上で最大の壁は、やはり輸送です。その課題を解決するために、JALグループにご協力を仰ぎました。同社には以前から弊社で販売しているジーマミー豆腐の航空輸送をお願いしており、その関係性がベースにあります。加えて、加工を担う坂下水産の加工場が那覇空港から車で約20分と近く、空輸との相性が良かったことも、今回の実現を後押ししました」(水野さん)
この“鮮度革命”の魅力は、余計な物流コストの抑制により実現した価格だけでなく、価格自体が固定されていることにもある。一般的に魚の売価は漁獲量やセリに応じて変動するが、本取り組みにおいては、まぐろを安定的な価格で販売できるように、納品価格を固定することが実現し、消費者は鮮度が良い生まぐろを安心して買うことができるのだ。
もちもちで舌に吸い付くような弾力が絶品!

今回販売される代表的な商品を、実食レビューとともに紹介しよう。まずは素材そのものの味を楽しめる「沖縄県産 天然生まぐろ刺身用」(100g当971円)。
食べる前に驚かされたのは、本商品を含むすべてに1滴もドリップが出ていないこと。聞けば、加工から最長4日後でもまったく出なかったとか。
食べてみると、もちもちとして舌にねっとり吸い付くような弾力で新鮮そのもの。無ドリップの赤身ならではのうまみも豊かで、贅沢な味わいだ。このおいしさが手ごろな価格で楽しめるとは、なんともうれしい。
【きはだ漬け握り】「沖縄県産生きはだまぐろ使用」1パック1,610円

次は、生のきはだまぐろを使った漬け握りを試食。成城石井自家製の漬けダレに漬け込まれており、生まぐろのしっとりやわらかな食感が、濃いめのタレによってさらに活かされ絶品だ。なお、こちらは現地での水揚げに応じて、沖縄県産生めばちまぐろを使った商品も同価格で販売される。

ほかにも、「きはだ(めばち)まぐろ切り落とし」100g当647円、「まぐろたたき(生食用)」100g当604円、「【まぐろポキ(ユッケ)】天然生ビンチョウまぐろ使用」100g当539円などバリエ―ションも豊富。
鮮魚作業場のある、首都圏を中心とした成城石井の12店舗で販売。時期に応じて、きはだ、めばち、びんちょう、本まぐろの天然もの4種と、6月からは養殖の沖縄県産本まぐろを取り扱う。取り扱う店舗が近くにある人は、ぜひ売り場をチェックしてほしい。
[取材・文・写真/中山秀明]
編集:bizSPA!編集部