「借金減らせます」ネット広告の影 広がる債務整理トラブルに法律事務所が警鐘

ネットやSNSを開くと度々目にすることのある「借金が減らせる可能性があります」という広告。光明を求めてアクセスするも、返済額が思うように減らなかったという声が広がっている。それは一体なぜなのか? 債務整理の現場を知るアディーレ法律事務所に、その実情と、問題点について尋ねてみた。
借金減額診断広告とは?その問題点について
──まず“借金減額診断広告”とはどのようなものなのでしょうか。また、どういった媒体や場面で多く目にする傾向があるのでしょうか?
「借金減額診断」とは、借入額や返済状況を数項目入力するだけで、「借金がいくら減るか」「0円になる可能性があるか」といった結果を瞬時に表示する、ウェブ上のシミュレーター型広告のことです。
主な掲載媒体としては、YouTubeの動画前後に挿入される広告や、Facebook、InstagramといったSNS広告が非常に多くなっています。一見すると便利な診断サービスのように見えますが、その実態は、債務整理(任意整理・自己破産・個人再生)の案件を獲得するための「営業ツール」です。診断の最後に氏名や電話番号を入力させ、勧誘の連絡が入る仕組みになっています。
──こうした広告について、どのような問題点や懸念が指摘されているのでしょうか?
最大の問題は、簡単な入力だけで「法的判断ができる」と誤認させる点にあります。
本来、個別の状況を詳しく聞かなければ、破産が適切か、任意整理で解決できるかといった方針や、実際にいくら減額できるかは判断できません。
しかしこれらの広告は、借入額や返済の有無を入れるだけで、あたかも「減額の可能性があります」と断定できるかのように表示されます。日弁連の指針でも、こうした「入力項目のみでは判断できないのに、できるかのように誤信させる表現」や、どのように入力しても「0円や減額の可能性がある」と表示して依頼を誘引する手法は、誤認を招くおそれがあるものとして規制されています。
費用の二重払いが発生するケースも 相談先を選ぶポイントは?

──「着手金を支払ったものの減額できなかった」など、相談者が結果的に不利益を被るケースはあるのでしょうか。具体的な事例があれば教えてください。
まず前提として知っておいていただきたいのは、最も一般的な「任意整理」という手続きでは、基本的に借金の元本そのものは減らないという事実です。
任意整理は将来の利息をカットし、月々の返済額を調整するものであり、元本を減らすには「自己破産」などの別の手続きが必要です。しかし、広告で「元本も減るのではないか」という過度な期待を抱いてしまうと、結果として不満が生じます。
弊所のアンケートでも、債務整理のサービスを受けた感想としてネガティブな回答が全体の約6割に達しています。
具体的には、「借金の返済と弁護士費用の支払いが重なり、借金がなかなか減らなくなった(30.2%)」、「無理な返済計画によって生活が改善されなかった(28.4%)」といった声が目立ちます。さらに深刻なのは、本来「破産」すべき状況なのに、詳しい事情を聞かれないまま安易に「任意整理」を勧められるケースです。
この場合、任意整理の費用を払った挙句に返済が立ち行かなくなり、再度費用を払って破産を申し立てるという「費用の二重払い」が発生してしまいます。
──なぜこのような広告手法が広がっているのでしょうか。背景にある業界構造やネット広告の仕組みについても教えてください。
背景には、2000年頃の規制緩和以降、弁護士業界の競争が激化したことがあります。
一部の事務所では、大量の広告費を投じて全国から見込み客を集め、業務をパターン化して大量に処理する「ビジネスモデル」が成立しています。本来、全国から集客するのであれば各地に支店を設けて「直接面談」できる環境を整える義務がありますが、それがないまま集客し、効率のみを重視して依頼者に最適な方針を二の次にしてしまう構造が問題視されています。
──日本弁護士連合会や政府による規制やガイドライン整備は進んでいるのでしょうか。現行制度は十分だとお考えですか?
正直なところ、広告手法は巧妙化しており「いたちごっこ」の側面があります。
4月1日から、簡易な入力だけで処理方針が「判断ができるかのように誤信させる表現」などを厳しく制限する新規の条文が追加され、規制は強化されました。ただ、各事務所の実際の処理体制が適切かどうかまでを日弁連が常に監視できているわけではなく、問題が表面化してから調査が入るというのが現状です。
──借金問題を抱えたとき、まず何をすべきでしょうか。相談先を選ぶ際に注意すべきポイントも含めて教えてください。
まず、「国が認めた借金救済制度」や「減額診断」といった、耳障りの良い言葉だけに飛びつくのは危険です。相談先を選ぶ際は、以下の点に注意してみてください。
・物理的な距離と面談:店舗が一つしかないのに全国に広告を出し、一度も会わずに契約しようとする事務所は、丁寧な聞き取りが行われないリスクがあります。
・処理能力の確認:弁護士が極端に少ないのに大量の広告を打っている場合、適切な事件処理ができるか疑問が残ります。
借金問題に悩む方は、督促などで精神的に追い込まれていることが多いですが、自分一人で悩んでも解決はしません。まずは、実績があり、しっかりと対面で向き合ってくれる弁護士に相談し、ご自身の状況に合わせた「最善の解決策」を見つけていくことが大切です。
[協力]
アディーレ法律事務所
[解説]
アディーレ法律事務所 秦和昌 弁護士