トランプ関税と金融市場の動揺【やさしいニュースワード解説】

在京の大手メディアで取材記者歴30年、海外駐在経験もあるジャーナリストが時事ニュースをやさしく解説。今回は、「トランプ関税と金融市場の動揺」です。
日本は24%!「トランプ関税」の衝撃
現地時間4月2日にアメリカのトランプ大統領が発表した関税政策(相互関税)が各国に衝撃を与えています。トランプ大統領は主要な貿易相手国に対し、全ての輸入品に一律10%の基本関税をかけたうえで、国や地域ごとにさらに上乗せ税率を課す方針を示しました。その結果、日本は24%の関税が課されることになりました。
この「トランプ関税」は、アメリカが輸入品に高い関税をかけることにより自国の産業を保護する目的の政策ですが、アメリカのみならず世界経済の景気悪化要因になりかねないとの懸念から金融市場が動揺しています。
発動直後に90日間の措置停止を発表
4日の米株式市場でダウ平均株価は、前日比2,231ドル安の3万8,314ドルとなり、一日の下げ幅としては史上3番目の大きさを記録しました。これを受けて7日の東京株式市場でも日経平均株価が前週末より2,644円ちょうど安の3万1,136円58銭と、史上3番目の下落幅となりました。その後も金融市場は不安定な動きを続けています。
相互関税は9日に発動されましたが、金融市場の混乱を受けて、トランプ大統領はその日のうちに、アメリカに対して協議を要請している国などに上乗せ部分について90日間措置を停止することを発表しました。停止期間中に各国に課す関税率は10%に引き下げられます。
金利上昇はアメリカ国内の景気に大きなブレーキに
トランプ大統領がこうした朝令暮改ともいえる見直しを行った背景には、金融市場でアメリカ国債が売られ、金利が急上昇したことがあります。
通常、株が売られるときには資金は債券を買う方向に向かい、金利は低下するのが一般的な市場の動きです。今回の株価下落局面ではアメリカ国債が買われてもよかったはずですが、逆に売られ、金利は上昇しました。金利上昇は消費や設備投資などに影響し、アメリカ国内の景気に大きなブレーキとなります。このため警戒した側近がトランプ氏を説得したのではないかという見方も出ています。
トランプ大統領の出方は先行き不透明
アメリカは日本の最大の輸出先であり、高い関税が課されると輸出企業には大きな打撃となります。このため日本政府はアメリカ側と早期に交渉を開始するべく赤沢経済担当大臣が訪米し、日本時間の17日にもベッセント財務長官らと会談する予定です。さらに石破首相も、交渉の推移を見ながら早期に訪米してトランプ大統領との会談を持つ構えです。
今後、トランプ大統領がどのような方針を打ち出すのか先行きは不透明で、当面はトランプ氏の発言に各国政府や市場が神経質に反応する日々が続きそうです。日本としてはアメリカでの投資や雇用に長年にわたる大きな実績があることを丁寧に説明し、理解を得ることが今後重要になるでしょう。