ロシア・中国と関係悪化で物価高や水産物の輸入停止も【岸田政権の3年間を振り返る】
インターネットやSNSで世界中の情報がリアルタイムで手に入る時代、オンライン会議で日本はもちろん、海外のどこにいてもコミュニケーションできるのが当たり前となった。ビジネスパーソンなら海外のビジネス関係のニュースも押さえておきたい。
そこで、各国の情勢に精通しているピエール・パパンさんに、2024年9月に終焉を迎える岸田政権を国際的な観点で解説してもらった(以下、ピエール・パパンさんの寄稿)。
外交分野で多くの功績を残した岸田政権
世界が注目する米大統領選挙が11月5日に行われるが、日本では9月27日に自民党新総裁が選出されることに伴い、岸田政権が終焉を迎え、新政権が発足することになった。
岸田政権は発足から3年となったが、日韓関係の改善や広島サミットにおけるゼレンスキー大統領の出席など、外交分野では多くの功績を残したものの、最後は伸び悩む支持率が命取りとなった。
ウクライナ侵攻によりロシアとの関係が悪化
では、岸田政権の3年間で我々の生活はどのように変化しただろうか。ここでは、国際的な視点から考えてみたい。
まず、岸田政権の3年間で最も衝撃的だったのは、ロシアによるウクライナ侵攻だ。それによって日本とロシアの関係は急速に悪化し、日本から英国やフランス、ドイツなど欧州に直行便で向かう際、ロシアの上空を飛べなくなった。これによって通常12時間程度で到着していたところが、中央アジア上空を通過するなど迂回路を余儀なくされ、15時間、16時間も上空で過ごさざるを得なくなった。
岸田政権がそれでもロシアとの関係を重視し続ければ、こういった事態にならなかった可能性もあるが、日米同盟を基軸とする日本外交に、それは不可能な選択肢である。
また、ウクライナ侵攻が長期化するにつれ、世界では物価高に拍車がかかった。無論、世界的な物価高の要因はウクライナ侵攻だけではないが、それが大きな助長要因となったのは間違いなく、これはロシア上空が飛べなくなった以上に多大な影響を与えている。
冷え込む日中関係で中国ビジネスが難しく
また、岸田政権の3年間で中国との関係は大きな変化はなく、むしろ日中関係は冷え込んでいると言えよう。バイデン大統領が2022年10月、先端半導体分野で大幅な対中輸出規制を強化し、その後、岸田政権も2023年7月に米国と協調する形で中国への輸出規制を始めたことで、中国側は日本への不満を強めている。
2023年8月以降、中国が日本産水産物の輸入を全面的に停止したことも、これが原因だ。2024年9月20日、中国が日本産水産物輸入の段階的再開させることで合意したと発表されたものの、この3年間で中国を取り巻くビジネス環境は大きく変化し、今後はさらに中国ビジネスが難しくなる状況が訪れるかもしれない。