ゲーム大会に裸族の出没…元自衛官が語る“駐屯地の知られざる生活”
「陸上自衛隊」と聞くとどんなイメージを思い浮かべるだろうか? 戦車に乗る姿や、厳しい訓練に勤しむ様子を思い浮かべるだろう。一方で、彼らの「オフ」の姿はあまり知られていない。
愛とユーモアにあふれた「ますらお(益荒男。本来はりっぱな男、勇気のある強い男の意だが、ここでは「陸上自衛官」を指す)ライフ」を描いて、Twitterフォロワー15万人超えという元陸上自衛官の“ぱやぱやくん”さん(@paya_paya_kun)。
そこで、ぱやぱやくん(著)・原田みどり(イラスト)『陸上自衛隊ますらお日記』(KADOKAWA)の一部を再編集して紹介する(以下、同書より抜粋)。
駐屯地の世界は異世界転生のよう
新隊員教育を終えて部隊配属されたますらおは、そこから数年間は駐屯地内に居住することを強制されます。外出できるのは、ほぼ休日のみ。
残念ながら、ロフトの付いたおしゃれなアパートに住むことはできませんし、女の子達とサントリーの「ほろよい」を片手にUNOする機会も失われます。若きますらお達は皆、駐屯地というワンダーランドで暮らすことになるのです。このワンダーランドでの生活こそが、自衛官特有の文化や風習を作り上げているといっても過言ではありません。
駐屯地はなんでも揃うRPGの村
実は、駐屯地は外出をしなくてもますらお達が生活できるように、「小さな村」のようになっています。食堂・大浴場・コンビニ・理髪店・クリーニング店・ATM・喫茶店・飲み屋はもちろん、駐屯地によっては寿司屋があったり、サウナ施設があったりとバラエティに富んでいます。
グラウンドや体育館もあるのでソフトボールやバレーボールも許可をとればできますし、さらにド田舎の駐屯地ではため池にブラックバスを放流し、バス釣りをしている隊員までいるので、駐屯地はちょっとしたレジャーランドともいえます。
さらに、同じ駐屯地は世の中に一つもないので、新しい駐屯地に行くと「ウワー! まったく分からないぞ!」というケースが多いです。そのため、ドラクエで新しい街に到着したように駐屯地内を散策し、暗闇に包まれた地図をアップデートしていく必要があります。ちなみに大きい駐屯地の場合、数年いても「未踏の地」が多くあり、頭の中に謎のエリアを残したまま転勤となることもあります。
一般の方からすれば、駐屯地というと武器や兵器がたくさんある施設と思われがちだと思います。しかし、このように陸上自衛官からすれば、駐屯地というのは小さな村であり、生活や居住空間としての意識が強いといえるでしょう。
そうやって駐屯地で生活をしていると、売店のおばちゃんに名前を覚えられることもあります。理髪店に行けば「あら、佐藤さん元気?」などの会話が始まり、喫茶店に行けば「いつものコーヒー」で通じるようになるので、ちょっとした昭和の商店街のような雰囲気です。とある駐屯地のクリーニング屋さんのおばちゃんは記憶力が抜群によく、店に行くと「あなたは認識番号G1122334の田中さんね」とサイバーパンクのアンドロイドのような挨拶をしてくれました。