芸人から小さなショップまで廃業の危機に!?インボイス制度の問題点
2022年7月10日に参議院選挙の投票が行われる。長引くコロナ禍や物価上昇など、解決すべき課題が山積みではあるが、なかでも2023年10月以降に導入が予定されている適格請求書保存方式こと「インボイス制度」に注目が集まっている。
実際、Twitterでは「#インボイスまだ止められる」「#私の未来にインボイス制度はいらない」といったハッシュタグが付いたツイートが連日投稿されており、問題視している人は少なくない。
とはいえ、「インボイス制度が導入されたらどうなるのか」、その弊害を知らない人は多い。改めてインボイス制度の問題点を税理士の平井志穂子氏に話を聞いた。
漫画家や芸人といった“推し”の危機
まずインボイス制度がどのようなものか聞くと、「インボイス制度はとても複雑な制度であり、詳細に説明するとなると税制度の根幹までお話しする必要があります」と前置きし、「消費税の納税が免除されている年商1000万円以下の事業者(免税事業者)を自主的に課税事業者にさせ、税負担を強いる制度です」と簡潔に回答する。
「売上1000万円以下かつBtoBの取引のある免税事業者、例えば一人親方やウーバーイーツの配達員といった人に大きな負担を負わせる制度です。美容師や整体師、社内外注など、実質的に従業員として働いていても、業務委託契約によっている方や、サラリーマンは年に20万円までの副収入は所得税申告を免除されていますが、それも対象になります。
他にも、漫画家やお笑い芸人、アニメーターといった私たちの生活を豊かにしている人達を廃業に追い込みかねません。年商1000万円以上稼げているクリエイティブ関連の仕事をしている人はほんの一握りです。インボイス制度が導入された場合、私たちの“推し”を、さらには“推し”になり得る才能ある若手クリエイターを潰しかねません」
余計な業務が増えてしまう
売上1000万円以下の免税事業者に税負担を強いるだけではない。その悪影響は広範囲に及ぶという
「所得税では一定より所得が少ない場合、確定申告は不要です。また申告が必要でも、白色申告や雑所得で申告するなど、事務負担が軽い人も多いでしょう。しかし、インボイス制度によって、免税事業者から課税事業者になれば話は別。
サラリーマンの週末副業や子育てしながらのクラウドワーカー、開業して間もないクリエイターなど、たとえ月1万円の収入だとしても、消費税の申告をして納税しなければ契約を取れないケースも出てきます(※取引相手が個人消費者でない場合のみ)」