ニトリに買収されるホームセンター「島忠」の侮れない実力
ホームセンター大手DCMホールディングス(以下、DCM)と、家具大手ニトリホールディングス(以下、ニトリ)による島忠買収劇が盛り上がりを見せていました。当初はDCMと島忠での合意の買収だったものが、11月13日に一転、後発で参戦したニトリが島忠を完全子会社することで合意しました。
そもそも、なぜ、このような流れになったのでしょうか。本連載「ブラック企業アラート」ではDCM・ニトリに加えて、ホームセンター業界首位のカインズと島忠の関係性を整理し、今回の買収劇の主役でもある島忠の企業体質についても分析を加えていきます。
島忠の動向が鍵を握っている
4社の大まかな規模の違いを把握するために、比較グラフを用意しました。カインズは非上場企業のため、売上額以外の額が非公表です。
2019年10月にカインズがDCMを抜いてホームセンター業界売上首位になったことが報じられました。しかし、実はその差はわずかで、DCMが首位に返り咲く可能性は十分にあります。
そのため、当初のDCMによる買収は「ホームセンター業界再編」の文脈で報じられていました。この買収劇を3社のIRリリース・公式資料に基づいて、時系列で整理しました。
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【10月2日】島忠・DCM、TOB(株式公開買い付け)開始予定について発表
【10月20日】「日経」ニトリが島忠買収に名乗りをあげた旨を報じる
【10月21日】旧村上ファンド系(シティインデックスイレブンス)、島忠株を大量保有していることが判明
島忠、一部報道について声明を発表
【10月26日】旧村上ファンド系、島忠株を8.38%所有している旨を金融庁に報告
【10月29日】島忠・ニトリ、TOB開始予定について声明を発表
【11月13日】ニトリが島忠の子会社化を発表
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このように並べると、10月20日頃から事態が一気に動いていることがわかると思います。
DCMの提示は、「負ののれん」を抱えた買収額
続いて、上記の事象についてそれぞれ解説していきます。まず、島忠・DCMの買収については「負ののれん」を伴った買収である(資産価値に対して買収額が少ない)ということがわかります。
島忠の純資産額:1,886億9,800万円
DCM提示の買収額:1,636億1,220万円(=4,200円×買付予定数38,955,287株)
したがって、概算で250億円ほどの負ののれんを抱えていることになります。通常の買収額は、純資産に加えて「将来産み出しうる価値」も見込んで算出されるため、純資産よりも高い金額が提示されることが多いです。そのため、負ののれんを抱えているケースは珍しいのです。
そして、島忠は多くのメディアで指摘されている通り、もともとアクティビスト(いわゆる「モノ言う株主」)から人気が高い銘柄でした。これは旧村上ファンド系(シティインデックスイレブンス)も例外ではありません。大量保有報告書によると、シティインデックスイレブンスは10月7日から島忠株の取得数量を明らかに増やし、10月14日には保有比率が5.75%に達しました。
これをもとに、10月21日に報告書を提出し、さらに10月26日には8.38%保有していることが判明しており、10月2日の島忠-DCMのTOB発表を踏まえて動いたと考えるのが妥当でしょう。