三浦春馬さん自殺報道にも問題が…日本の若者が追い込まれる背景
7月18日、俳優の三浦春馬さん(30)の突然の自死は日本全国に大きな衝撃を与えました。様々な媒体で背景などが報じられましたが、いずれも推測にすぎず、真相は闇の中です。
一方で、亡くなられた三浦春馬さんをはじめ、日本では若年層(15歳から34歳)の自殺は、以前からの社会問題です。
厚生労働省の『令和元年版自殺対策白書』によれば、自殺者数は10年連続で減少傾向にあるものの、15歳から34歳いわゆる若年層では依然として死因の1位をしめているのです。
また、2018年には19歳以下の自殺死亡数(10万人あたり)が統計をとりはじめた1978年以来過去最悪の数字を記録しました。こうした問題の背景にはどのような要因があるのか、そして私たちにできることとは何なのか、今回は筑波大学教授で心理学者の原田隆之先生(55)に話を聞きました。
若年層の孤立、社会的支援の欠如
――若年層の自殺の問題、どのような背景や要因があるとお考えでしょうか。
原田隆之(以下原田):1つ取り上げるべき点は若年層の孤立、社会的支援の大きな欠如という問題があることでしょう。簡単に言えば、現代の若者はつながりの希薄さという問題を抱えています。
これはここ10年ずっと言われ続けていることです。特に最近だと新型コロナウイルスの影響も少なくないでしょう。
つながりが希薄化すると、何か問題があっても気楽に相談できない。身近に相談する人がいなければ、専門家や「いのちの電話」のようなホットラインに相談するという選択肢もありますが、よく知らない人に自殺の相談などしていいのだろうかという懸念も出てきます。
若年層に限らず全般的に言えることでもあるのですが、若年層の方たちは特に、専門的には援助要請(他者に何か助けを求める行為)対する抵抗感、何か自分の悩みを打ち明けることへの抵抗感がすごく強い傾向があります。これは物理的な問題だけでなく、心理的な抵抗感も強い。これが大きなリスクになっていると思います。
心理的な問題を口にできない日本人
――なぜ若年層は誰かに援助を求める、相談することに対する心理的な抵抗感が強いのでしょう?
原田:海外、たとえば欧米であれば、セレブであっても、気軽にカウンセリングを受けますし、それを周知することが、むしろステータスになるようなところがあります。
ですが、日本は逆に、弱み、特に心理的な弱みに対してカウンセリングを受ける、相談をすることを社会的にネガティブに見る傾向がすごく大きい。
要するに心理的な問題を持っていることに対する社会的なスティグマ(差別、偏見)が依然としてあるのです。またそういったスティグマを内面化しているがために、人様に相談する前に自分でどうにかしなければいけないと考えこみ、余計に煮詰まってしまうことがあると思います。