一発勝負で失敗する人が見落としがちな「小さな失敗」の重ね方
誰でも、仕事はうまくこなしたい、評価されたいという気持ちは同じです。
ただ、企業側には手厚い社員教育体制を調える余裕がなかなかなく、「見て覚えろ」「自分で学べ」という環境の中で萎縮してしまい、成果も出せず、うまくいかない……という負のスパイラルに陥ってしまう人が多いのではないでしょうか?
そこで今回は、新刊『仕事の不安・悩みがなくなるロジカルシンキング』(あさ出版)著者である苅野進氏に、「小さなリスクを恐れない思考法」について解説してもらいます(以下、苅野氏の寄稿)。
「小さな失敗」を上手にできれば評価も高まる
たとえば、営業のプレゼンテーションを考えてみましょう。練りに練った自称傑作の資料を締め切り日に上司に提出して大失敗をする若手が多いのですが、ビジネスの現場はテストのような一発勝負ではありません。
締め切り前に同僚に見せてみる、先輩に見せてみる、粗い状態でも締め切り前に上司に見せてみる。そこでのフィードバック、つまり感想と修正に関する意見をもらうことは、良い結果を生むために非常に効果的なのです。締め切り日前のダメ出しや失敗は、徹底的に洗い出しておくことが重要です。
私が代表を務める学習塾・ロジムでの、中学受験のお話です。
関東地方の中学受験はだいたい1月中旬から入試が始まり、2月初旬まで続きます。多くの受験生は、自分が本命とする学校の試験を受ける前に、練習として他の学校の入学試験を受けることができます。
「失敗したら怖い」はもったいない
模擬試験と違って、初めての会場で本物の試験を受けることは、小学生にとってかなりの試練ですが、この経験は本当に希望する学校の入学試験に向けて、非常に有益です。
朝起きて、学校に到着するまでにどんな気持ちになるのか。試験中はいつもとどのように違うのか。模擬試験とはまったく違う状況を体験することができるのです。
このような重要な機会を「なんだか落ちたら怖いから」という理由で避けてしまうことは、非常にもったいないことです。
模擬試験ではしないようなミスをしたり、普段から講師に注意を受けていたことを「自分は大丈夫」と受け流していたことで痛い目をみてこそ、その貴重な経験を、つぎの本番に生かすことができるのです。
私たちは練習の入試に向かうときに、「思いっきりミスをしてこい」と送り出します。どんなミスをするかをすべて明らかにしたいので、ミスはすればするほどよいこと、を確認します。
本番ギリギリまで「挑戦」を避け、「失敗」を避けたいという戦略では、本番で大きな失敗をする可能性が高まります。事前に「小さい挑戦」をして「小さい失敗」を積み重ねておくことで、結局は本番に向けて力を高めることになるのです。仮説思考を身につけておくと、「上手に実験をする」力が身につきます。そして実験がうまくなると、実験がこわくなくなります。
「実験がうまくなる」とは、「成功しても失敗しても、多くを学べる」ように考えられた実験をできるようになるということなのです。
何もしないでいるよりも、絶対に得をすることができるようになれば、怖さもどこかに飛んでいきますね。