達成率500%を実現した「スーツ形のジャージ」のクラウドファンディング。超アナログな舞台裏
クラウドファンディングが急速に普及する中で、開始から3時間半で目標金額100万円を達成、1か月後に達成率500%を実現した機能派スーツ「スーツの形をしたジャージ」が話題を呼んでいます。
その名の通りジャージ生地を使用したスーツで、アクティブに働くビジネスマンのために「ビジネスマナーをクリアしたスポーツウェアを」と着想されたものだそう。
ネット戦略で成功を掴んだように思えるこの事業の裏側には、実は超アナログな営業努力があったとか。「スーツの形をしたジャージ」を考案したT-FO(ティーフォ)の代表・東熙大(あずま・きだい)さんに、その仕事術を伺いました。
就職先を1年半で退職。自転車の旅へ
――複数の職歴を経てT-FOを立ち上げたという東さん。まず、これまでどんなキャリアを歩まれたのでしょう。
東熙大(以下、東):経営者だった外祖父の影響で、物心ついた頃から社長になりたいという夢を持った子供でした。大学卒業後は奨学金返済のために2年間、営業職で働きましたが、アパレル系での起業を志して、文化服装学院でアパレルデザインを学び直しました。卒業後は紆余曲折がありながら起業資金を貯め、この度、プロジェクトのスタートと同時にブランド・T-FOを立ち上げました。
――順風満帆なキャリアのように思えますが、苦労はありましたか?
東:もちろん、たくさんありました! まず、文化服装学院卒業後はデザイン職として働きたかったのですが、入社できたのは営業としてでした。小規模な会社だったのでいろんな経験を積むことはできたものの、オーバーワークを感じ1年半で退職。その後の目処も立たないままに、東京から沖縄まで自転車ひとり旅に出てしまいました。これまたいわゆる自分探しの旅、ってやつです(笑)。
旅を終えて再就職した革製品の会社は、2008年に起きたリーマンショックの影響を受けてまさかの倒産。その後は、まず起業資金を貯めるために、運送業と飲食業(ピザデリバリー)を掛け持ちしました。
――それは思いがけず、波乱万丈な半生! 目標のためとはいえ、アパレル業界から離れることに不安はなかったのでしょうか。
東:いえ。当時はアパレル業界自体が冷え込んでいたので、もう修行しつつ給料をもらうなんて都合の良い働き方はしていられない!という気持ちでした。だから、さっさとお金を作って起業してしまおうと躍起になり、その間は5~13時に宅配ドライバー、16時~夜までピザデリバリーという働き方をしていました。
40歳まで続けたWワーク。心が折れなかったワケ
――そのような長時間のハードワークで、心が折れそうなときはありませんでしたか?
東:運送業と飲食業は昨年、つまり40歳までやっていました。目標がなかったら、心折れてますよ。実際、疲れすぎて明日が見えない夜もありました。
――落ち込んだ夜にマインドを立て直すコツってあるのでしょうか?
東:僕が気持ちを切り替えられた理由に、趣味のマラソンでの成功体験があります。僕にとってのマラソンは、リターン100%の成功体験。大学時代はサッカー部だったのですが、例えばサッカーは練習するほど成功するとは限らないけど、マラソンはやるだけ成果が現れるので。自分が努力しきることが大切なんです。
僕は、参加するマラソンレースを決めたら、当日までにするべきトレーニングを考えて、実践して、当日にその成果を確認します。そのように取り組んできたので、現在のフルマラソンの成績は3時間4分台。市民ランナーとしては上位5%くらいに入ります。
この短期・中期・長期の目標を立てる取り組み方って、そのままビジネスに当てはまる。だから、心が折れそうなときは、マラソンで成績を伸ばした経験を自分の擬似成功として思い出して、「今が厳しくとも、頑張り続ければ絶対報われる」と鼓舞しました。