地元密着、異色のドラッグストア。年商230億円を遂げた経営戦略
北九州市は、全国約1700の市町村で人口減少数第1位、全国20の政令指定都市で高齢化率第1位と、人口減少と高齢化のあおりをもっとも受けている地区です。
そんな北九州市に73店舗を構え(うち9店舗は山口県下関市)、年商230億円を稼ぎ急成長しているドラッグストアがあります。6月20日放送の『カンブリア宮殿』(テレビ東京)では、異色のドラッグストア「サンキュードラッグ」の人気の秘密が紹介されました。
超高密度出店が急成長のカギ
サンキュードラッグの成長戦略は、超高密度な出店基準です。「半径500メートルごとに1店舗」と基準を定め、まるで都会のコンビニエンスストアのように、狭い地域に集中して出店しています。
社長の平野健二氏は、その狙いを「健康な高齢者に徒歩で来店してもらえるようにするためだ」と説明します。
かつて北九州市は、鉄鋼の街として栄え、平野氏が親から受け継いだ薬局も繁盛していましたが、鉄鋼業に陰りが見えるとともに、衰退。商店街は寂れ、大手チェーンのスーパーも撤退してしまい、薬局も危機に瀕します。
そんな折、「これから俺はどこで買い物をすればいいんだ」と嘆く常連客の声を耳にしました。平野氏は「若者は、何か買いたい物があれば、車で郊外に行くが、高齢者はそれができない。そんな人たちをカバーしていくと、人口減少の中でもやっていける」と番組の中で思いを語りました。
また、「都市部の高齢者の生活圏は、400メートルで完結する」という国の資料を目にしたことから、歩くことができる健康な高齢者にターゲットを絞ってサンキュードラッグの経営戦略を練ります。
同じ敷地内にクリニックや高齢者向け住宅を誘致し、調剤薬局はもちろん、スーパーマーケット並に日用品や食品を揃え、すべてが揃う医療モールを築いたのです。
栄養士が常駐。高齢者の健康をサポート
サンキュードラッグには、ドラッグストアにしては珍しく、管理栄養士が60人以上在籍。そして、会員制の健康教室「スマイルクラブ」で、会員の「食事」と「運動」のサポートしています。さらに、高齢者の自宅に出向き、訪問栄養食事指導もおこなっており、栄養のある食事を作るなど、きめ細かい健康管理までしているのです。
店舗内でも、店員に声掛けや相談をすると5円相当のポイントがもらえる「ご相談ポイントカード」という独自の取り組みをしています。店員とお客の距離が近く、雑談をすることも頻繁にあるとか。さらに、こうした取り組みには、雑談からお客の健康状態を掴み、より適切な服薬指導をするという狙いもあります。
サンキュードラッグがここまでするのは「地域のかかりつけ薬局」を目指しているからだそうで、平野氏は「会社の存在理由は『役に立ち続けて存続すること』だ」と番組内で言い切ります。そのために、地元の北九州市にしっかりと根付き、高齢者に寄り添った経営をおこなっています。それは、大手チェーンのように全国展開で一律のサービスを提供する手法とは全く異なったやり方です。