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30年売れ続ける理由とは?「明治 エッセル スーパーカップ」の秘密と挑戦

30年売れ続ける理由とは?「明治 エッセル スーパーカップ」の秘密と挑戦

1994年の発売から30年。今や“コスパ最強アイス”として定番となった「明治 エッセル スーパーカップ」。なぜこれほどまでに長く愛され続けているのでしょうか。明治グローバルフードソリューション事業本部フローズン・食品事業部フローズンデザートGの吉岡征史さんに、30周年記念の限定フレーバー「きなこ」「ずんだ」の開発秘話とともに、愛される秘密についてお話を伺いました。

量の多い低価格カップアイスで勝負

明治グローバルフードソリューション事業本部フローズン・食品事業部フローズンデザートGの吉岡征史さんインタビュー

――「エッセル スーパーカップ」は1994年に発売された商品とのことですが、誕生した背景を教えてください。

吉岡征史さん(以下、吉岡):当時、弊社は「レディーボーデン」との契約を終了し、アイスクリームの製造ラインが空いてしまったという事情がありました。そのため、何か新しい商品を開発する必要があったのです。

同時に、1990年代前半はコンビニが急速に増え、店頭のショーケースもメーカー主導から小売主導へと変わっていきました。売れる商品しか残らない時代になったんです。加えて、アイスクリームの輸入が自由化され、価格競争の激化も予想されていました。そういった3つの大きな変化が、「低価格で量が多く強い商品力のあるカップアイスを作ろう」という発想につながりました。

――初めからよく売れたのですか?

吉岡:実は、最初から売れたわけではありませんでした。強い競合商品があり、当初はなかなか小売店さんにも受け入れてもらえなかったんです。

ただ、実際に販売していただいた店舗での売上が非常に良く、それを資料にして営業部が人海戦術で展開していったところ、一気に広まりました。半年から1年ほどで爆発的に売れるようになり、市場での立ち位置を確立した形です。

「気づかれないリニューアル」が続く理由

明治 エッセル スーパーカップ30周年イメージ

――長く愛される理由は、やはり“おいしさ”でしょうか?

吉岡:そうですね。特に「超バニラ」は、今も昔も根強い人気があります。実はリニューアルを何度もしているのですが、お客様から「変わった」と気づかれることはほとんどありません。

でも、その“気づかれない改良”こそが重要で、時代やトレンドに合わせて味や食感を微調整しているんです。パッケージも微妙に新しいものにブラッシュアップしていくことで、鮮度感を保ち、新しいユーザーの獲得につながっていると思っています。

30周年フレーバー「きなこ」「ずんだ」誕生秘話

明治 エッセル スーパーカップ きなこ

――30周年フレーバー「きなこ」と「ずんだ」は、どのように生まれたのでしょうか?

吉岡:お客様にとって特別な記念になるようなことをしたいという思いから、「お客様の声を商品に」というテーマで進めました。たまたま選ばれたのが、どちらも“和”のフレーバーだったんですが、インバウンドを意識したというわけではないんです。

「きなこ」は、粉っぽさが出ないように、とけやすさを調整しています。きなこクッキーを入れて食感もプラスしました。「ずんだ」は地域によって馴染みがない方も多く、SNSでは賛否両論でしたが、それも話題性という意味では狙い通りです。

明治 エッセル スーパーカップ ずんだ

大人向け「エッセル スーパーカップ 大人ラベル」の狙い

明治 エッセル スーパーカップ 大人ラベル

――大人向けの「大人ラベル」シリーズも以前から展開されていますね。

吉岡:レギュラーサイズの200mlでは「量が多すぎる」という声に応える形で、大人向けの少し小さめのサイズ(172ml)やフレーバーを展開しています。コーヒーやショコラなど、素材の味わいをしっかり効かせたラインナップで、誰にでも好かれる商品ではなく、思い切り振り切って“刺さる人に刺さる”味を目指しました。

特に最近では「華やか紅茶」など、本格派の香りを楽しめる商品もあり、大人の方にご好評いただいています。

――新しいフレーバーへの挑戦が、ブランドの人気を広げているのですね。

吉岡:そうですね。定番の「チョコミント」や「クッキーバニラ」などを待望する声も多いので、新旧のバランスを見ながら展開しています。新フレーバーは刺激や驚きを、定番は安心感を提供するという住み分けです。

SNSは発信だけでなくコミュニケーションの場

明治グローバルフードソリューション事業本部フローズン・食品事業部フローズンデザートGの吉岡征史さん

――SNSの活用も積極的にされていますね。

吉岡:はい。Instagramでは女性や主婦層のユーザー向けにアレンジレシピの投稿に特化し、X(旧Twitter)ではブランドイメージを上げる面白いネタやユーザーとのコミュニケーションを重視しています。実は私ひとりで両方担当しているんですが、少人数体制だからこそ、スピード感と柔軟性を大事にしています。

――最後に、これからの「エッセル スーパーカップ」について教えてください。

吉岡:ブランドとしては「身近で安心できる存在」であり続けたいと思っています。でも、それだけだと飽きられてしまうので、ときどき“ずんだ”のような驚きも出していきたいですね。

お客様の声に真摯に向き合いながら、次の10年、20年も愛されるブランドを目指して、これからも挑戦を続け、成長していきたいと思います。

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